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資産運用ビジネスをめぐる、メガバンク其々の戦略

 年明け早々、「みずほフィナンシャルグループと三井住友トラスト・ホールディングスが傘下の資産管理銀行を合併する協議に入った」とロイター通信が報じました。

 「傘下の資産管理銀行」とは、資産管理サービス信託銀行と日本トラスティ・サービス信託銀行。両行が合併すれば、信託財産は現在、国内最大級規模である三菱UFJフィナンシャルグループ系列の銀行(日本マスタートラスト信託銀行)の約2倍、380兆円となります。系列の枠を超えた再編劇は、金融関係者の注目を集めました。しかしながら、大きなシステム投資を必要とする信託銀行の資産運用ビジネスにとってスケールのメリットは大きく、合併による合理化戦略は、熾烈な競争の自然な帰結なのかもしれません。

 一方で、規模では追い抜かれることになる三菱UFJフィナンシャルグループはここ数年、海外カストディ機関のM&A戦略によって急速にグローバル化を進めて参りました。
 
 2013年6月、バターフィーㇽド社の買収、2015年、6月UBS資産管理事業の買収、2016年、キャピタル・アナリティクスの買収に続き、2016年7月にはグッゲンハイムパートナーズ傘下のライデックス・ファンド・サービシズを買収。こうした海外企業の買収戦略は、世界的ネットワークの構築と同時にスケールメリットの担保を計り、幅広い商品ラインナップを武器に、グローバルな資産管理サービスに対応していくための戦略表明にほかなりません。三菱UFJ信託銀行のホームページにはグローバル展開への宣言が高らかに掲げられていて、そのことを裏付けています。

 長引く低金利を受け、海外へと目の向いた国内投資家のニーズや運用資産の多様化という時代の変化も見逃せませんが、資産運用ビジネスをめぐる戦略の違いが各行の特色と今後の事業展開を明示化している点が何よりも興味深く思われます。大手三行が、それぞれに特色ある戦略を明確に打ち出すことで、目指すべき航路を分かつ選択をする。これはまさに新しい時代に突入する、大きな舵切りだと言っていいでしょう。
 
 各社戦略が違えば、当然、求められる人材ニーズにも各社の戦略の特色が反映されることは間違いありません。合併となればシステム統合のためにIT人材が広く求められるでしょう。グループの運用会社がコストメリットを求めてオペレーションのアウトソースを拡大するならば、運用会社出身者が優遇されるかもしれません。グローバル展開を標榜する陣営においては海外でのM&A業務経験者はますます歓迎されるでしょう。当然ながら英語力は益々重要視されます。

 資産管理ビジネスの変貌は、長引く低金利やFINTECHに代表される新勢力の台頭など、これまでにない経営環境下で厳しい競争を強いられている大手フィナンシャルグループが迫られている大変革の、氷山の一角に過ぎないのかもしれません。

いずれにせよ、今年は資産管理ビジネスの大きな転換期となりそうです。各行の異なる戦略が、今後のマーケットにどのような影響を及ぼすのか、大きな期待をもって注視して参ります。

エグゼクティブ・コンサルタント 田丸剛生

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