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2019年下期金融人材市場の総括と2020年上期の展望

 2020年、金融人材マーケットはメルペイによるOrigamiの買収劇からスタートしました。2019年迄は旺盛だったFintech関連の求人市場動向に表れ始めた緩やかな陰りの兆しを象徴するかのような出来事でした。
 本稿ではKANAEアソシエイツが昨年初頭に予想した金融人材マーケットを振り返りながら、更に本年2020年上期の動向を展望して参ります。

2019年下期金融人材マーケットの振り返り

1.大手信託銀行が顧客の個人情報データを預かって民間企業へ提供する「情報銀行」に乗り出したことを皮切りに、予想通り、程なく多くの企業が追随する結果となりました。個人情報を「資産」と見做し新たなデジタルサービスとして「信託ビジネス」を展開する。そのビジネスモデルは証券業界へ飛び火し、現在はトークンをはじめとするデジタル証券の商品化の流れを創出するに至っています。

2.年金運用ビジネスの求人ニーズは相変わらず堅調です。年金営業、機関投資家営業のニーズはとても多かったです。オルタナティブ運用のゲートキーパー(PE投資、ヘッジファンド投資、インフラ投資、海外不動産投資)などでは常時、採用ニーズがありました。

3.投信ビジネスの求人ニーズは著しく減少。

4.富裕層向けの遺言信託のコンサルティング業務経験者の求人は充足し、現在は採用後の教育期間へとすでにフエーズが移行している模様です。同様に昨年初頭には富裕層向けのサービスプロダクト強化や事業承継に伴うプロフェッショナル求人へのニーズが高騰していましたが、こちらもすでに一服感が見られます。

5.2019年はPEファンドの求人ニーズが対前年(2018年)で30%も減少しました。
単に採用ニーズが減少するばかりか、求職者の人気においても陰りが出てきているのが特徴的です。かつての人気職種を選択せず、独立するか、あるいはメガバンクへの転身を希望する求職者が増えています。投資銀行ビジネスの求人ニーズは2018年同様高いものの各社採用計画は全体的に未達傾向です。

6.ベンチャーキャピタルの求人ニーズは予測に反して減少傾向にあります。人材獲得に苦戦していたフィンテック企業を中心とした投資先の資金調達を推進できるCFO人材の求人ニーズも落ち着いています。2020年の初頭に報じられたorigamiの買収劇に目を離せません。
7.2019年はサブプライム以降に発生した人材需要のアンバランスをカバーするために監査法人への依存傾向が高まった年でしたが、金融インダストリー人材のニーズは実際のところ、今はそれほどでもありません。

8.マネーロンダリングおよび暗号資産などリスク管理の求人ニーズはFATF以後、引き続き求人ニーズはあるものの、採用には至らないケースが少なくありません。

9.ESG投資は引き続き外せないキーワードですが、2020年はスチュワードシップコード遵守におけるコーポレートガバナンスの高まりや持ち合い株解消の流れを汲み、アクティビストと互角に対話できるIR人材の求人ニーズが高騰しています。

10.Fintechが呼び水となった「異業種提携」は銀行、証券、保険ともに引き続き業界全体の重要なキーワードであることは間違いありませんが、一年前と比べると人材の流動は減少傾向といえます。

2020年上期の展望

 黒字リストラという言葉がニュースを賑わせていますが、景気の良いうちに早期退職希望者を募る大企業は今なお少なくありません。一方、人材紹介会社大手3社によれば、41歳以上の転職紹介数は2019年には初めて1万人を超えました。その数は6年前の3倍と言われています。しかし景気低迷時のリストラと異なり、その世代の方も「転職先が決まりやすい」状況です。実際に弊社経由である銀行の役員を退職した50代の方がそれまでの新規事業での豊富な立ち上げ経験を買われ、ある地方銀行に転身された事例もありました。新天地で、しかも次世代のためにこれまでのご経験と能力を活用できる活躍の場として大変やりがいを感じておられました。こうした事例は今後、ますます増えると思われます。かつて中高年の転職といえば給与が下がることが一般的でしたが、最近はベースラインが担保されるだけでなく、かなりの優遇条件で迎え入れられるケースも少なくありません。特に採用に苦慮する一部の企業では高額報酬の採用も出てきています。

 早期退職者を募集する一方で、組織の新陳代謝を促すべく、メガバンクが再び100人単位の若手人材の積極採用に乗り出し始めたことも見逃せません。しかし金融業界全般としては採用計画未達が続いており、給与水準を上げざるを得ない市場相場の変化があります。最近では正社員でも転勤や異動のないプロフェッショナル契約制度を設けるなどフレキシブルな雇用形態も珍しくありません。2020年の金融人材市場を展望する際、こうした相場や国際的環境を踏まえ、「給与体系」や「雇用制度」にいかに柔軟に対応できるかどうかで人材採用の優劣がつく、ということは今年も言えそうです。

 給料水準、さらには雇用制度や働き甲斐に関する項目の企業文化への定着度など、採用競争要因が転職市場の中でコンペティティブな水準を保てているのか、デューデリジェンスすることからスタートしてみてはいかがでしょうか。私どもKANAEアソシエイツがそのお役に立てるのであれば幸いです。ご連絡をお待ちしております。

代表取締役 阪部哲也

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