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スペシャリスト人材の獲得競争に伴う、人事評価と報酬制度の変化

 昨年の8月、NTTデータやNECに続き、富士通が市場価値の極めて高い優秀な技術者を獲得するために既存の人事制度を整備し、役員レベルの報酬処遇(年収最大4000万円)も辞さないという宣言をしたことが話題になりました。これは近年、新卒・中途採用でGAFAに優秀な人材を青田買いされてきたことへの対策であり、選ばれる会社になるための経営戦略変更の表明でもありました。

 金融業界も同様で、優秀なスペシャリスト=専門職人材を獲得するには採用制度の整備や社内評価制度の見直しは必須であり、ここ数年、組織変化を伴う変革がさまざまな形で実現されてきました。

 遡れば2016年、損害保険ジャパン日本興亜がデジタルを基軸にデジタル3兄弟と呼ばれる事業部(デジタル戦略部、ビジネスデザイン戦略部、ビジネスクリエーション部)を新設した際、異業界からCTO、CIO、CMOを中途採用し、役員待遇で迎え入れたことはこれまでの金融機関にはなかったことで、業界に多大な影響をもたらしました。また、2020年に第一生命が営業職を除く社員を対象に給与総額を4%増額し、若手であっても専門性や生産性の高い社員の処遇を手厚くする、と報じたことも記憶に新しいでしょう。今後は多くの社員が早期から専門性を磨くプロフェッショナル職となることを見越して、「部長職」など管理職ポストを廃止し、専門的なスキルを持った人材の中途採用を従来の2倍に増やす計画です。

 金融業界では長期にわたり「置かれた場所(配属先)で咲く」ことを求められ、一律に管理職を目指すことを前提としたゼネラリスト型のキャリア形成が主流でした。その流れが変わりつつあります。先述の第一生命の事例のように、専門人材を高く評価する制度の見直しがハイレイヤーのポジションにとどまらず、一般職の領域においても浸透してきたことは、その変化の波が徐々に定着し始めてきた証しといえそうです。見方によっては、従来のゼネラリスト尊重型の風土を脱し、一芸に秀でた専門職人材の自立的キャリア形成に企業として深くコミットしていくという、企業からのメッセージとして受け止めることもできます。

 こうして大手金融機関が早期から専門性を磨ける土壌づくりに注力する方針に舵切りをし始めた背景には外部からの優秀な人材の獲得のみならず、社内の優秀な人材の引き留め効果を狙う目的があることも見逃せません。
 これまで日系金融機関でファンドマネージャーやトレーダーをはじめとした運用系のポジション、グローバルを含む監査やセキュリティ、AML、ポジションなど特定の分野でスペシャリストのポジションにあった専門職人材が社内異動を機に外資系金融機関へ転身するケースが少なくありませんでした。実際、ご自身の専門性を高めたいという優秀な方ほど他社へ転職してしまう傾向にありました。いずれも、さらなる発展性を求め、より高額な年収と待遇が約束される新たなステージを希望される方が多かったのが特徴です。昨今、複数の日系大手金融機関で従来の人事制度とは別に新たな人事制度を作り、未来の幹部候補としての専門職人材を中途採用していることは、これまでの状況に一石を投じそうです。

 上記のような会社では、新しい制度を設置するにあたり、手始めにグローバルな報酬サーベイ会社へ日系ならびグローバル金融機関の競合他社の給与制度の調査を依頼し 外資系を含む競合他社に比べて遜色のないよう、従来の1.5倍から2倍の異例の給与制度を設定したようです。中途採用された方の中には年収3000万円のオファーもあるようです。しかも年俸制の契約社員としてではなく、正社員として将来の幹部候補としての厚遇なのです。自社の人事制度や組合の問題等で設定が難しい場合は、別途子会社を作り、そこで従来の報酬水準とは異なる特別な待遇で迎え入れることもあるようです。

 もちろん、それなりの評価や高いパフォーマンスが求められることは言うまでもありません。折しも、コロナ禍下でリモートワークが日常的になった現在では、以前よりも成果へのコミットを強く求められる傾向が加速していることは間違いありません。とはいえ、多くの外資系金融機関がそうであるように、高額な年収を約束される代わりに、結果を出せなければ即解雇というリスクがなく、安定的かつ長期的に成長のチャンスを狙えるポジションが約束されていると聞けば、心が動く方も多いのではないでしょうか。
 
 これまでの常識にとらわれない、アグレッシブな組織の変化が伴う専門職人材への求人は内部のハレーションを避けるため、非公開で行われることがほとんどです。
転職相談をいただいて初めて、在籍している企業が実は変革のさなかにあることを知るケースもあるのです。その結果、「転職せずに、このまま留まることが得策」という判断になる場合もあるかもしれませんが、スペシャリストとして自立的なキャリア形成をするために、どんな選択肢があるのか。将来を見据えて一度確かめてみることは無駄ではないはずです。この機会にぜひ、ご相談ください。                        

 専任コンサルタント 兵藤正憲 

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