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新興のフィンテック企業に優秀な人材が次々と集まる理由とは
金融機関のビジネスそのものを根底から変えてしまう可能性を秘めていると言われているフィンテック。我が国においては欧米に比べ、その発展は遅れていると言われて来ましたが、低金利で資金調達しやすい投資環境にくわえ、法改正や金融庁の後押しもあり、ここに来て新興のフィンテック企業の台頭が目立って参りました。人材市場においても、インターネット関連企業やITコンサルティング会社、ゲーム会社など、様々な業界からメガバンクをはじめとする大手金融機関のみならず、新興のフィンテック関連企業へ優秀な人材が多数移動しています。
当社でも昨年来、このようなフィンテック関連のご相談をいただく機会が増えていて、金融業界の大きな変革の波を、日々実感しております。
ところで、フィンテック関連企業様とのお取引が増えたことで、ふと気づいたことがあります。それは、いわゆるベンチャー企業における人材像の様変わりです。かつてITバブルを賑わせたITベンチャーと、今のフィンテックベンチャーを比べますと、ずいぶん印象が違うのです。
かつての典型的なITベンチャーは、“IT寵児”と呼ばれる個性的な経営者が率いていて、伝統的な大企業とは対立する構図にありました。これに対し、最近のフィンテックベンチャーはメガバンク、大手金融機関をパートナーにした共栄共存の穏やかな佇まいがあります。
一昔前、ベンチャーを語る代名詞と言えば、反骨精神/ビジョナリスト/飽くなき情熱/苦労を厭わぬ挑戦者/魅力的なカリスマ性を持った経営者が牽引する営業陣営……と体感温度の高いものでした。これに対し、現在のスタートアップ企業の経営者に共通する温度感は極めてクールであり、かつスタイリッシュです。
一体なぜ、このような違いが生じたのでしょうか。
私共は、「経営者に、インベストメントバンカー出身者が多い」というフィンテック関連新興企業の特徴が、少なからず影響しているのではないかと考えています。
フィンテック先行の海外でも、大手金融出身者が、フィンテック企業に流れる動きは活発です。元々、金融マンであった彼らは、金融機関のことをよく理解しており、共存にむけた協業、提携への道がスムーズになる傾向にあるのではないでしょうか。
また、彼らは財務モデルや事業評価スキルに富んだ、実務畑のビジネス経験者です。投資家に対してのプレゼンテーションも慣れており、資金調達を得意としています。いわば、参謀タイプの敏腕経営者。さらに付け加えるなら、極めて自然体であることも特徴的です。
彼らはガレージオフィスからグローバル企業へと成長を遂げた、あのマイクロソフトやアップルの黎明期を髣髴とさせるスピード感を持ちながら、粛粛とビジネスを推進していきます。
こうした経営者のビジネススキルや、自然体のスタイル、大手金融機関との協業、提携による現実的なビジネスモデルなどに惹かれ、次々と優秀な人材が集まります。その結果、かつてのITベンチャーとは大きく異なる風土を持った企業が続々と誕生しているように感じます。
これまでは保守的な金融業界の扉を叩くことはなかったであろう人たちも、フィンテックをきっかけに続々と流入するようになりました。また、主体的でイノベーティブなビジネスができるステージを求め、大企業から新興企業への転身を厭わない人も増えています。
大手金融機関の採用側においては、従来の価値観に囚わられない、柔軟なマインドシフトが迫られていると言えそうです。
担当コンサルタント/森田泰弘