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保険業界の人材市場における、二つの変化

先日、銀行業界や保険業界では2019年春入社の新卒採用を大幅に削減することが報道されました。銀行は18年春比14.4%減、保険は同9.7%減の見通しと言われています。既にフィンテック導入で店舗取引や窓口業務の削減が報道されている銀行業界に数年の遅れがあったとはいえ、保険業界もまたAI化、ビックデータの活用をはじめとするデジタル化、いわゆる「インシュアテック」を加速させる動きは止まることを知りません。
こうした状況の中、保険業界における人材マーケットに大きなふたつの変化が起きています。そのひとつは専門領域の人材採用における 外部採用の動きです。
 
新卒採用が大幅に削減される一方で、専門職採用に積極的な企業が増えています。日本生命保険と明治安田生命保険が2019年4月入社の新卒採用から、総合職の中に専門人材採用枠を新たに導入することを発表。これに続いて東京海上日動火災保険も新卒のIT専門職採用を行うことを決定しています。この動きは急速なデジタル化に伴う市場の環境変化に迅速に対応するため、専門領域の人材育成を新卒採用の段階から計画的に行う必然性を物語るものです。
一方で、旧態依然としたシステムの再構築は喫緊の課題であり、AI化、デジタル化を加速させるための新たなAPI基盤づくりが急がれています。ビックデータを活用した保険加入者の拡大や保険支払い業務の自動化、コールセンター業務、アンダーライティング機能のAI化、顧客とのダイレクトコネクトなど、新たなサービスや商品を起ち上げる動きが活発化する中、データサイエンティスト、デジタルマーケティングをはじめフィンテックに通じたシステム人材などスペシャリスト人材のニーズが高騰しています。
こうした優秀なスペシャリスト人材は保険業界には少ないため、異業界から獲得しなければなりません。数少ない専門職の人材確保のため、保険業界では、これまでにない新たな雇用形態やインセンティブ規定を設けることでスペシャリスト人材を獲得する動きが顕著です。
すでに大手電機メーカー、自動車メーカーなどいわゆるメーカー出身のデータサイエンティストが保険業界へ転身されるという事例も増えています。たとえば、ドライブレコーダーのビックデータを事故予防のアラートサービスに活用するなど、これまでの知見を新たな領域で活かせる親和性や大幅な年収アップが決め手になる方も少なくないようです。デジタルマーケティング領域では広告代理店などから保険業界へ転身されるケースも増加しています。

ふたつ目の変化は、アクチュアリーのキャリアの変化です。ご存知のように、アクチュアリーはもともと新卒から専門職として採用され、研究員、準会員、正会員を目指し、保険リスクの計算や商品数理、主計、リスク管理など数理の中で特定の業務に携わる、いわばスペシャリストの王道とも呼ぶべき、確固たるキャリアの道筋が約束されていた職種です。
ところが、昨今のAI化に伴い、数理計算機能はAIに置き換えられる確率が高いと、ご自身の将来に危機感を覚える方々が少なくありません。そのため、従来通りのキャリアパスではなく、将来を見据えた結果、データサイエンス領域を志向する方が増えてきているのです。
実際、これまで培ったご自身の数理スキルを「異業種分野との掛け合わせで何とか活かしたい」とコンサル業界へ転身された方がいらっしゃいます。現在、医療データのビックデータの分析業務に携わり、ご活躍のようです。これまで王道といわれてきたキャリアパスに囚われることなく、自らの専門性を広げることでより自律的かつユニークなキャリア構築を目指されたこの方の柔軟な姿勢に、私はとても感銘を受けました。

私共、KANAEアソシエイツでは、AI化による環境変化をポジティブに捉え、自らの新たなキャリアを切り拓きたいとお考えの方の異業種転職のサポートにも注力しております。思いがけない、新たな扉が開かれるかもしれません。まずは、お気軽にご相談ください。

KANAE アソシエイツ 保険専任コンサルタント 兵藤正憲

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