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国内と海外それぞれの不動産投資市場と、求人の動向
海外の大型資本による日本での不動産取引が活発化しています。
2020年東京オリンピック開催での外国人来訪客をにらんだ、外資系ホテルの進出は、供給過剰が懸念された時期もありましたが、一定の利回りを期待できる日本の不動産はいまだ外国資本に根強い人気があります。東京だけでなく大阪、名古屋をはじめ、奈良、金沢、北海道などの地方都市でも外資系ホテルラッシュが続いています。
オフィスビルの市場においては2017年末に世界最大級の政府系ファンド、ノルウェー政府年金基金が東京都心の商業ビルを一括取得したことを皮切りに、海外の対日大型投資が相次いでいます。2018年には一服感が出ていたようですが、今年は米ブラックストーンが国内の物流施設を1000億円超えで取得するなど、再び取引が活発化しました。この背景には日本の金利政策があります。円の調達金利が低いため、一定の利回りを期待できる日本市場は海外の機関投資家は魅力的と判断しているようです。
更にレジデンスの分野では先頃、ドイツの保険大手アリアンツが約1300億円を投じ、東京、大阪の賃貸マンション約80棟を取得しました。少子高齢化の一方で、「職住近隣を望む共働き世帯の増加で大都市ではまだしばらく安定した賃貸収入を見込むことが出来る」と判断する海外投資家の日本への投資意欲はますます高まり、大型投資が相次いでいます。
不動産サービス大手CBREによれば2019年4~6月の国内不動産の取引額は8,610億円と前年比60%増加しました。世界の主要都市と比較しても東京の利回りは依然として高く、しばらく高水準の取引額が続くと見込まれています。
このように国内不動産市場が活況を呈する一方で、国内投資家による海外の不動産やインフラへの投資も加速しています。
三菱UFJ銀行が邦銀単独では最大の1000億円を投じ、海外のインフラ投資向けファンドを新設しました。大和証券グループはホテルを投資対象とした不動産投資信託(REIT)を新設して1000億円規模の開発計画を掲げた資金調達をスタートさせたと同時に海外不動産に投資するファンドづくりに乗り出しました。2019年の日本発の海外不動産投資額は前年比で約3倍に増加。機関投資家が投資先に多様性を求めていることにも後押しされ、デベロッパーや商社がファンドを組成するなどして不動産を取得して、ビジネスを拡大しています。
国内と海外、二つの不動産市場。不動産投資・証券化市場は緩やかではあるものの、持続的な成長をつづけ、2019年3月末時点でJリートは63銘柄(資産規模18.3兆円)に、私募リートは29銘柄(資産規模3.1兆円)に拡大しました。こうした環境下、求人ニーズにおいても顕著な変化が見られます。
国内不動産市場においては多くの不動産ファンド、アセットマネジメント会社がアセットマネージャーを求めています。デューデリジェンス、アンダーライティングをはじめとする取得物件の適正評価から期中管理、売却に至る全てのフェーズで幅広く経験者が求められています。
更に特筆すべきは、未経験者を歓迎する向きがあることです。例えば応募資格欄に「金融機関出身者で不動産投資関連業務に興味がある方(英語力があればなお可)」などと書かれた求人票が増えています。リーマンショック以降の採用手控えで生じた中堅層の空洞化を今日まで埋められないまま組織がシニア化していくことを企業は回避せねばなりません。そこで業績好調の今、未経験の若手に白羽の矢が当たったというわけです。若手の皆様にとってはまたとないチャンスです。この領域は若手の専門家が少なく、希少性の高いキャリアとなることが期待できます。
対して、海外不動産市場においてはゲートキーパー、ポートフォリオマネージャーの求人が高騰しています。不動産ファンド、アセットマネジメント出身の経験者はもちろんですが、銀行、証券にて不動産ファイナンス領域の経験者、あるいは生保会社で海外不動産投資やインフラ投資をはじめとするオルタナティブ投資の経験者、大手デベロッパーにて海外不動産開発に携わっていた経験者など、幅広い人材が求められています。
市場の拡大とともに、機関投資家の要望は投資対象の多様性やファンド選定の多面性など高度化しています。また、目先の利回りだけでなく、SDGsやESG投資への配慮も不可欠です。不動産投資のスペシャリストは、今後ますます投資家に妙味を提供できることが求められることでしょう。
「多様性」と言うは易く、スキームを身につけるのはなかなか難儀ではありますが、その分、やりがいと厚待遇は約束されています。ご関心をお持ちの方はぜひ一度、ご相談ください。
専任コンサルタント 朝田恒平