KANAE ASSOCIATES

TEL 03-3431-7700

最新情報News

ESG偽装を突いて拡大する、ヘッジファンドの存在感

 「ESGウオッシング」というキーワードをご存じでしょうか。「ESGの偽装」を意味する言葉で、もともとは環境配慮をしているように装うことを意味する「グリーンウオッシング」が由来だそうです。パリ協定や国連が採択したSDGs(持続可能な開発目標)を追い風に、E(環境)S(社会)G(企業統治)を考慮したESG投資は世界的な潮流となって久しいですが、その一方で、昨今さまざまな問題点も多く指摘されるようになってきました。脱炭素を掲げ、環境配慮をし、あたかも労働条件の改善を誓いながら、実際は劣悪な労働条件の下、人権的搾取が横行するなどESGブームの下で企業の問題解決への疑問点も徐々に浮き彫りになっているのです。

 こうした「偽装」が問題視される中、空売りという手段でその不審点を追求する、ヘッジファンドの存在感が日増しに大きくなっています。

 本来、短期的なリターンが求められるヘッジファンドと中長期的な視点でのリターン獲得を本筋とするESG投資は一見、矛盾するように見られる向きもあるかもしれません。しかし、短期間とはいえ、「ウオッシング」と称される企業の偽装が暴かれやすくなることで市場に与える影響や社会的意義は非常に大きいと考えられているのです。

 2019年、スイスのプライベートバンク、ユニオン・バンケール・プリヴェ(UBP)では、ジェフリーズ証券で調査部長を務めたズへール・カーン氏が、コーポレートガバナンス(企業統治)が不十分で問題発生のリスクがある日本企業に着眼した、新たなヘッジファンドを立ち上げました。
 2020年に入り、ESGの総本山ともいえるPRI(Principles for Responsible Investment責任投資原則:国際連合が2005年に公表し、加盟する機関投資家等が投資ポートフォリオの基本課題への取り組みについて署名した一連の投資原則)が「空売りは責任投資の中核的なツール」であるとし、「投資家はESGリスクを回避し、よいインパクトを生み出せる」と指針を示したことはESGを積極的にヘッジファンド戦略に取り入れるファンドの動きをさらに加速させました。
 さらに今年7月にはフランスの運用会社、BNPパリバ・アセットマネジメントが、環境問題への取り組みに積極的な企業の株を買い、反対に消極的な企業の株を空売りするロング・ショート型のファンドを立ちあげたことが報道され話題になりました。

 ESG投資のブームの下、時の趨勢と共にさまざまな潮流が生まれ、それに伴いダイバーシティーの問題や環境問題などに取り組むべく、企業の人材ニーズも変化してきました。そして今、「ESGウオッシング」を担うヘッジファンドの動向に注目が集まっています。

 ESGに関心を持ちキャリア形成を目指す皆さま、ヘッジファンドも選択肢の一つとして検討されてはいかがでしょうか。

 専任コンサルタント 朝田恒平

現状に満足しない、志あるプロフェッショナルのために。 Copyright © KANAE ASSOCIATES Co.,Ltd. All Rights Reserved.