KANAE ASSOCIATES

TEL 03-3431-7700

最新情報News

「with コロナ」の時代、シニアプロ人材は転職できるか?

 緊急事態宣言から約6カ月。コロナ禍は世界の経済活動に大きな影響を及ぼしました。とはいえ、この半年間の求人動向を振り返る限りにおいて、金融業界とIT業界は例外と言えるかもしれません。驚かれる方も少なくないと思いますが、外資金融やベンチャーキャピタルの求人ニーズが大幅に減少したことを除けば、金融人材の転職マーケットでは実際、ほとんど影響がなかったというのが事実です。先行き不安な状況の中でも銀行をはじめ、証券、生保いずれもweb面接など試行錯誤しながらオンラインでの採用活動を積極的に行うなど、マインドセットを変え、新たな体制に柔軟に適応した組織からいち早く平常運転へと切り替わっていった印象を持ちました。とりわけ、シニアと言われる40歳以上のプロ人材の求人ニーズに関しては予想を上回るほどで、コロナ以前も以後も、総じて堅調でした。

 本稿では緊急事態宣言からの6ヵ月間を振り返りながら、特に引き合いの高かったシニアクラスの職種に焦点を当て、求人ニーズと傾向についてお伝えして参ります。

銀行

<1> コロナウイルス感染拡大防止のため国際的な移動は難しいとはいえ、グローバル戦略は多くの企業で引き続き重要な経営課題であることに変わりはありません。そのため経験豊富な銀行経験者の引き合いが強くなった傾向がみられました。
<2> 海外業務、国際法務、コンプライアンス、監査、デジタルIT、情報セキュリティ、投資銀行、ストラクチャードファナンス、LBOの経験者の求人ニーズが顕著でした。なかでも国際法務、融資審査(非日系)はいずれも45歳での転職事例もありました。
<3> 不安定な状況下で支店の統合をはじめとする業界再編成が進む中、投資銀行業務の求人ニーズも旺盛です。VPからエグゼクティブディレクタークラスのポジションでの採用ニーズが常時あります。
<4> DX、デジタルマーケティング領域の事業統合はこれまでも喫緊の課題と言われ続けてきましたが、ここにきて一層、本気度が高まっているようです。その流れに伴い、採用活動にもいよいよ本腰を入れるケースが増えています。全般的に専門性の高いIT人材を広範囲で強化する動きがあり、中でも投資銀行では従来では考えられないくらいの採用ニーズが高騰しています。それに伴い、好待遇でのオファー案件も増えています。DXがキーワードとなる求人案件では異業界出身者であっても全体像を把握し、運用構築の青写真が描ける人材のニーズが高いです。来期以降もこうした需要は継続するため、引き続き、興味深く動向を注視してまいりたいと思います。

証券

リテール部門ではPB、リテール営業の求人ニーズは一時期よりかなり減少しています。一方、投資銀行部門ではセクターバンカーとして特にTMT、ヘルスケア、不動産などの求人が増加。またそれ以外にもM&Aアドバイザリー、買収ファイナンス、証券化関連、インフラファイナンスなどの部門で依然として強いニーズがあります。

アセットマネジメント

<1> アセットマネジメントに関してはここ数年停滞していた投信ビジネスの採用ニーズがコロナ禍以後、急速に増えてきています。大手銀行、証券会社を始めとする販社向けの販売支援を従来のアナログなやり方からデジタルマーケティングに切り替える動きが急速に進んでいます。運用会社各社が投資教育のプログラムやポートフォリオの分析ツールもデジタル化対応しようとしています。こうしたコンテンツの企画や動画制作、デジタルマーケティングのプラットフォームづくりができる方を採用するニーズが多数あります。
<2> 投資顧問ビジネスに関してはコロナ禍以前と同様、引き続き強い採用ニーズがあります。とりわけ年金営業、機関投資家営業、オルタナティブ運用におけるプロダクトマネジャーやゲートキーパー人材(PE投資、ヘッジファンド投資、インフラ投資、プライベートデッド、海外不動産投資)の引き合いが強く、人材獲得競争は熾烈化しております。さらにオルタナティブ残高が増えることで複雑化したオペレーション業務の責任者のニーズも増えています。

PE

<1> プライベート・エクイティの求人ニーズは旺盛で、むしろコロナ以前よりも高騰している印象があります。その中で特徴的なのは大規模のPEファンドと少数精鋭のPEファンドでは採用動向が二極化していることです。50人超えの拡大基調のPEファンドでは分業化が進んでいるため、オリジネーションに特化したシニア人材や戦略コンサルの幹部人材の中途採用が目立ちました。一方の少数精鋭のPEファンドにおいては一人で何役もこなせる優秀な経験者を探しています。いずれにせよ採用ニーズは非常に高いです。
<2> PMIシニア人材の採用にもこれまでになかった動向がみられます。従来であればM&Aアドバイザリーのエクスキューションや戦略コンサルとしてのスキルセットは必須でしたが、現在は投資後の企業価値向上のための全体像を把握し、戦略的なフレームワークを構築できる人であれば、ファイナンスの経験がなくても重宝がられる傾向にあります。しかも若手ではなく、シニア人材を採用するケースが複数目立ちました。
<3> バイアウトファンドの好調に伴い、メザニンファンドも好調でいずれも採用ニーズが髙まっています。
<4> ここ数年、バイアウトファンドからメルカリをはじめとするメガベンチャーへ転身する人トレンドが続いていましたが、コロナ以後はメガベンチャーに対する期待感や憧れが薄れてきた印象です。投資ファンドやPEファンドからメガベンチャーへ転職を志望する求職者は減少し、ファンド間での採用事例が増えてきました。2018~2019年と比較すると、PEファンドが採用しやすい状況になっているように思います。とはいえ、PEファンドから総合商社への転身希望者は依然として高いことは申し添えておきます。

 以上、この半年の金融業界の採用動向について振り返ってみましたが、コロナ禍の影響を全く感じさせないほど各社の採用活動は堅調です。転職活動を躊躇されていた方も、まずは当社にご相談ください。金融転職市場の最新動向を、可能な限り具体的にお伝えいたします。

 KANAEアソシエイツ 代表取締役 阪部哲也

現状に満足しない、志あるプロフェッショナルのために。 Copyright © KANAE ASSOCIATES Co.,Ltd. All Rights Reserved.