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変わりゆく地方銀行が創出する、新たな求人ニーズ
ここ数年、地方銀行の再編は活発化しており、2021年1年間を振り返っただけでも枚挙にいとまがありません。例えば、同年1月、新潟県での第四北越銀行の発足を皮切りに、5月には三重県で三十三銀行が発足。更に同月には青森銀行とみちのく銀行が、7月には荘内銀行などを傘下に持つフィディアホールディングスと東北銀行がそれぞれ経営統合を発表しました。10月には福井銀行が同一県内の福邦銀行を子会社化し、12月には愛知県の愛知銀行と中京銀行が経営統合に向け基本同意したことを発表しています。
注目すべきは従来のような経営統合や子会社化などによる再編のみならず、広域連携の枠組みで業務の共同化、高度化に向けての取り組みが盛んに行われているという点です。地方銀行10行が参加する「TSUBASAアライアンス」は傘下のTSUBASAアライアンス株式会社にて2020年10月よりアンチマネーロンダリングセンターを設置し、活動をスタートさせました。翌年の2021年同月には千葉銀行本店を拠点に「事業戦略部」を新設し、参加各行の知見を集約しながら連携を強化しています。具体的には、DX関連施策の推進、人材育成やダイバーシティ、ESG・SDGs、情報集約・活用、新事業への取組みなど各行に共通する重要課題に関する共同化や集約化に向けた企画、提言を積極的に行っています。これまではとかくセキュリティの構築など「守り」の協力ばかりが目立っていた連携でしたが、近年は「攻め」の新たな要素がふんだんに盛り込まれている点が非常に特徴的です。
更に、2021年11月22日に施行された改正銀行法が、地方銀行のこうした新たな取り組みを加速させています。金融庁が銀行に対して、これまでの銀行業務以外への出資規制を大幅に緩和し、広告業やシステム事業などへの参入にお墨付きを与えたこの法律によって、地域経済の活性化などを目的とする地元のベンチャー企業などへの出資が盛んにおこなわれるようになりました。十六フィナンシャルグループなど、地元のベンチャー企業などを対象とした投資専門の子会社を設立した地方銀行もあります。銀行の新規事業への参入からしばらく目が離せそうにありません。
デジタル化も急速に進展しています。
昨年5月、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)が設立した日本初のデジタルバンク「株式会社みんなの銀行」が開業しました。直近では北國銀行が、2022年1月17日、「freee入力出金管理with 北國銀行」のサービスを開始しました。freee株式会社と北國銀行の協業による、起業間もない企業やスモールビジネス向けの無料入出金サービスです。北國銀行は「2024年までには個人法人問わず、ほぼ100%デジタルバンキングを目指す」と語り、そのシステム開発や運用を全て自前で行うという意志を表明しています。WebマーケティングやITコンサルの領域に関して、長らく外注一択であった金融業界が異業種の経験者に門戸を開き始めてから久しいですが、経験者を異業界から招聘するだけでなく、自前でそうした人材を育成する点は、今後の地銀の人事戦略に新たな潮流を予感させます。
このような数々の新たな取り組みに比例するように、地方銀行による中途採用ニーズにも変化が生じてきています。従来は投資銀行業務や市場運用業務を始めとした伝統的な銀行業務の採用が中心となっていましたが、証券子会社や資産運用子会社、事業再生や地域活性化をテーマとした投資専門子会社の設立、信託業務の内製化、人事制度・組織開発などのコンサルティング業務や中堅・中小企業の経営コンサルティングなど、銀行業務以外での採用ニーズが幅広く顕在化しております。
融資担当者としてだけなく、これからの地方創生を担う企画立案者として活躍できる人材が求められており、事業会社などでB to CのマーケティングやITコンサルに従事し、新規事業やプロジェクトをゼロから創造してきた経験者が重宝される傾向はしばらく続きそうです。
興味深いことに、求職者にとってはポジションや給与の優遇だけでなく、ご自身がこれまで培っていらした経験や知見が新たなフィールドで活かされる点で地方銀行からのこうした採用案件に好感触を示すケースが少なくないことも新たな潮流と言えそうです。とりわけ親の介護や移住などを目的に、地元へUIターンを希望する方にとって「願ってもないオファー」と受け止められる向きが強いように感じます。新卒で就職活動をする際、選択肢として考えたこともなかった地方銀行への思いがけない転職を一番喜んでくれたのが親御さんだったという方もいらっしゃいました。働き方が多様化する中で、地元へのUIターンを選択肢としてお考えの方は是非一度、ご相談ください。
専任コンサルタント 内田徹