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2022年上半期金融転職市場 採用実績の明暗を分けたもの
2022年、金融業界における転職市場の上半期を振り返りますと、あらゆる領域で人材の流動化がダイナミックに加速した半年間でした。
とりわけ、メガバンク3行をはじめとした大手銀行、大手信託銀行の中途採用ニーズの高まりは今期4月の当初から目標採用人数として顕著に現れていましたが、半年が経過し、採用実績数としても前年と比較したところ、約2倍という結果に落ち着きそうです。IT業界など他業界からの中途採用枠の拡大のみならず、メガバンクからメガバンクへの転職もすでに珍しい事例ではなくなりつつあります。役職定年の廃止が新たな潮流として報じられる一方で、業界の若返りを賭けたトランジションリクルーティングが活発化した年だったと言っても過言ではないでしょう。
意外に思われるかもしれませんが、アソシエイトクラスの志向の変化も採用実績数を後押ししていました。主に若手層でメガバンクからベンチャーへの転身というトレンドが下火となり、メガバンクへの転職がここにきて人気が高まっているのです。その大きな要因のひとつがメガバンクにおけるワークライフバランスの浸透だといえると思います。働き方改革が単に制度だけではなく、組織風土にも変化をもたらしているとみる向きが強くなっています。
コロナ禍でリモートワークが定着したことも大きな影響をもたらしました。単に働き方が変わるだけでなく、たとえば共働き夫婦のライフスタイルを理解し、サポートする視点が企業にあるかどうか、自分の成長の機会をどれくらい用意してくれるか、スキルアップへのフォローアップはあるかどうかも企業選びの重要な判断材料になっています。
圧倒的な売り手市場の今、候補者はいわゆる同業他社の年収テーブルを熟知していることは見逃せません。同じ会社の身近な同期が仕事内容は変わらず、転職で年収アップを果たしている状況を目の当たりにし、それが転職動機になったとご相談に見えるケースも確実に増えています。
相変わらず、人材の争奪戦が極めて熾烈である職種は以下の通りです。
〇サスティナブルビジネス
〇ストラクチャードファイナンス
〇プロジェクトファイナンス
〇オルタナ投資
〇監査・コンプライアンス
〇デジタルデータ活用
〇情報セキュリティ
〇IR・SRコンサル
〇外部委託運用
〇M&A
上記の獲得が極めて困難である職種経験者においてはせめて引き抜かれることを前提に年収テーブルを確保することが肝要です。
とはいえ、年収は候補者の大きな判断材料になることは間違いないのですが、年収だけでは競争力のあるコンペティションにはなりえないことを企業の採用人事は熟知しておく必要があるでしょう。多くの企業がジョブ型へ移行し、職種毎の年収テーブルを設定しましたが、ワンプラットフォームのビジネスモデルを打ち出している大手銀行、大手信託銀行においては構造上年収テーブルにどうしても矛盾が生まれているのが現状です。
有り体に申し上げれば、去年の倍の数の優秀な人材を獲得できた企業があったということは同時に他社に引き抜かれた企業が存在するということです。この明暗を分ける鍵は候補者にとって年収以外でベネフィットとなる情報をどこまで採用側の企業が提供できるかにかかっています。同じ仕事内容で転職してくる候補者に「いかにわが社が魅力的であるか」他社にはない魅力を差別化してアピールする必要がある、と言い換えてもいいでしょう。
候補者は転職を考える時、多くの企業を併願しています。彼らが企業の選別をする際に年収以外で判断基準としていることが、実は面接における企業側の対応であったり、プロセスそのものだったりします。そのことに採用側の人事担当者が気づいていないケースは多々あることです。
「面接」は採用側にとって、候補者選びの要となる重要なプロセスですが、注目していただきたいのは選ばれる側も面接を通じて企業を選んでいるという視点を人事がもてるかどうかなのです。
たとえば、採用に成功している強い組織の人事の特徴として挙げられることの一つに、面接の場で現場と人事が対等であり、連携がうまくなされているということが挙げられます。実は候補者もここはよく見ている点です。この力関係のバランスが悪い企業を敏感にかぎ取ります。
『ワーク・ルールズ』の著者のひとりである、Googleの人事トップ、ラズロ・ボック氏によれば、短い時間で優秀な人材を見抜けるかどうかに要する選考回数は多くて4回だということです。4回あれば、85%は判断できる、とも言っています。当然、短い時間で判断するには面接のプロセスを構造化し、精度をあげることが必要であることはいうまでもありません。面接回数を重ねるわりに採用に至らないケースの多くは質疑の内容が属人的で質問内容が担当者によってバラバラだという共通点があります。
これが採用に成功している企業の面接では、質疑応答を通じて、候補者も自分にとって必要な情報を得られるというフェアな機会創出の場になっています。ほんの一例ですが、候補者が面接で聞きたいことは次のような項目なのです。
「私はこの転職によって・・・・」
‐自分の担当できるクライアントのグレードがあがるか?
‐裁量が増えるか?
‐年収が上がるか?
‐前職ではできない経験ができる要素があるか?
‐クロスボーダー案件が増えるか?
‐キャリアの可能性があがるか?
‐会社の格があがるか?
‐チームワークがよいか?
‐ライフワークバランスがよいか?
‐中途入社でも出世している実績があるか?
‐女性も上級管理職になっているか?
‐役職定年があるかないか?
‐海外にいける可能性があるか?
‐自分の出身企業のOBがいるか?
翻って、採用したい人材がいるなら、その能力があるかどうかを見極めるために構造化した面接の実施が不可欠といえます。こうした面接の詳細に関してご興味をもたれた採用ご担当者がいらっしゃいましたら、ぜひ私共、KANAEアソシエイツにご相談ください。ご活用いただけるノウハウを提供させていただきます。
代表取締役 阪部哲也