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スタートアップ企業を支援するポジション求人増加の背景
金利上昇局面に入って以降、銀行では本業回帰の動きが見られ、国内企業への資金調達支援のほか、スタートアップ企業向けの様々な成長支援を強化する動きが活発化しています。この背景を遡りますと、岸田元内閣が2022年11月に掲げた「スタートアップ育成5か年計画」が挙げられます。当時、岸田政権は2022年を「スタートアップ創出元年」として、この計画を発表しました。国内スタートアップへの投資額を5年後(2027年)までに10倍の10兆円規模に拡大することを目標として、融資制度や税制優遇、補助金など幅広い政策で援助する内容となっております。この5カ年計画のポイントのひとつに、スタートアップが大きく成長するために必要な資金供給を受けられるよう、ベンチャーキャピタルからの投資をはじめとした様々な資金調達の手段を充実させるための支援策が挙げられます。
出資機構からの出資機能強化や税制優遇、公共調達の拡大、IPOタイミングの柔軟化など、あらゆる角度から拡充が検討されています。また、それまで銀行法により、銀行から事業会社への5%を超える出資は禁止されていましたが、2021 年に銀行法が改正され、設立から10 年以内のスタートアップ企業に対して出資する場合には5%超の出資を認める例外措置について拡充が行われました。これ以降、銀行に対して積極的なスタートアップへの出資を促す動きが徐々に高まっていったと記憶しております。
大手金融機関の動きをみていきましょう。
みずほ銀行は2023年4月に事業成長支援室を立ち上げました。同社では中堅クラスの上場企業を対象に、M&Aや株式対策、事業再生、場合によっては非上場化などの提案を行っています。スタートアップ企業が自社だけでは不可能な成長を実現するため、銀行が出資し、M&A促進をはかるとともに、オープンイノベーション促進税の拡充を図っています。
2024年3月には三井住友信託銀行と福岡銀行が「金融機関共同研究型ベンチャーデットファンド」を設立することが報じられました。これまでスタートアップ企業への資金調達はエクイティが主流でしたが、2023年にはすでに複数の企業がベンチャーデッドへの本格参入を表明しており、国内唯一のファンドに注目が集まっています。
2024年7月には三菱フィナンシャルグループと三菱UFJ銀行が大阪府のスタートアップ企業に30億円を出資することも話題になりました。出資金額の大きさのみならず同行はDXを活用したプラットフォームを立ち上げ、自社のネットワークを駆使した多様な出資の選択肢を提供し、起業からIPO、その後も成長ステージ毎に寄り添う成長戦略のソリューションを打ち出しています。
このような背景もあり、現在メガバンクをはじめ金融機関のキャリア採用で増えているのが以下です。
今は成長段階前のまだ格付けの低いスタートアップ企業であっても、将来の成長性を見込み、融資や出資(投資)を行う支援業務や支援施策企画業務、また、これまでのデット、エクイティという伝統的なファイナンス手法のみならず、なかには出資(投資)という具体的な解決策を提案し実行まで可能なポジションもあります。過去の財務状況の分析力のみならず、企業の未来を見る「目利き力が必要」とされることに妙味を感じる方にとってはやりがいのある環境といえそうです。
投資銀行、戦略系コンサルティングファームにてIPO関連の業務経験がある方、プライベートエクイティ、べンチャーキャピタルフロント経験がある方が歓迎されますが、なかには法人向けに提案型営業をされてきたしてきた方も対象としている企業もございます。いずれにせよ、成長の可能性を潜在的に秘めたスタートアップ企業を自分で発掘し、支援しながら事業を共創することによろこびを感じる方、またそうしたベンチャーマインドや気概のある方にこそ向いているポジションでしょう。
事業共創という命題は業務内容も幅広く、高い専門性が求められます。金融機関において新たな事業投資モデルを構築していく未知数のやりがいや楽しさ、得難い経験値に魅力を感じる方、強いご興味を持たれた方はぜひ一度、ご相談ください。
コンサルタント 佐藤史織