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資産運用会社におけるプロダクトガバナンス関連求人について

 本稿では資産運用会社におけるプロダクトガバナンス(顧客の最善の利益に適った商品提供等を確保するためのガバナンス)に関する動向・求人についてご案内致します。

 石破首相は昨年2024年10月の就任時に資産運用立国の政策を前岸田政権から継承・発展させていくことを表明しました。金融庁も今年2025年7月に資産運用会社などを監督する「資産運用課」を設置し、資産運用立国の実現に向け、資産運用業の発展を後押します。

 昨年1月にスタートした新NISA(少額投資非課税制度)は、我が国の家計金融資産が貯蓄から投資へシフトすることを促しました。日本証券業協会が2024年12月に発表した「NISA口座の開設・利用状況」によると、旧NISAにおいて2014年の制度導入から2023年末までの10年間で累計買付額は約35兆円でしたが、新NISA導入後の2024年1~9月末までの9ヶ月間だけで新規買付額が約14兆円となり、2024年9月末時点までのNISA口座における買付額は累計で49兆円に達しました。

 このように「貯蓄から投資へ」の潮流が急速に高まり、個人にとって投資が身近になった一方で、個人投資家にとっては「商品の選択肢が多すぎて選べない」「商品に関する情報が分かりづらい」といった問題も浮上しており、金融庁は投信等の金融商品の製販(資産運用会社等の組成(製造)会社や証券会社等の販売会社)全体に「プロダクトガバナンス」の強化・確立を求めております。
 組成会社(資産運用会社等)におけるプロダクトガバナンスに関する直近のトピックとして、金融庁は2024年9月26日に「顧客本位の業務運営に関する原則」の「改訂版」を公表し、そこでは、組成会社(資産運用会社等)向けに5項目(①基本理念、②体制整備、③金融商品の組成時の対応、④金融商品の組成後の対応、⑤顧客に対する分かりやすい情報提供)から構成されるプロダクトガバナンスの「補充原則」を新たに追記しました。

 各社の取り組みの一部をご紹介致します。

 野村アセットマネジメントは2023年5月から自社HPで自社の公募投信を評価するファンド・レビューを開始しました。ファンドごとに3つの評価項目(①運用実績、②商品性(信託報酬等のコスト面や、平均保有期間など)、③情報提供)を、それぞれ3段階で評価しており、その3段階も3色(赤・黄・緑)で分かりやすく表記しています。なお、参考までに、最も厳しい「赤」は「改善すべき点が認められる」という評価であり、当社HP2024年8月掲載の「ファンド・レビュー・レポート2024」ではレビュー対象175本のファンド(アクティブファンドのみ)のうち、9本のファンドに何かしらの項目で自ら「赤」を付けており、これらの改善状況については2024年12月に当社HP「改善の取り組みの進捗状況」にて公表済となっております。
 三菱UFJアセットマネジメントも2024年3月に「プロダクトガバナンスレポート」を開始し、初回3月に「国内株式・債券等」、6月「外国株式等」、9月「外国債券等」、12月「アロケーション・その他」とファンドを4つに分類し、検証結果を3ヶ月ごとに順次公表しました。
 アセットマネジメントOneは2024年8月に組織改編を実施し、商品本部内の「商品調査企画グループ」が担っていた「商品戦略企画機能」と「プロダクトガバナンス機能」を分離し、前者を「商品戦略グループ」が、後者を「商品業務グループ」が担うこととしました。
 大和アセットマネジメントは2023年6月に「プロダクトガバナンス会議」を設置し、経営陣がプロダクトガバナンスに責任を持って対応する体制を構築しました。
 
 なお、2024年12月24日の日経新聞の記事によると、2024年12月20日時点の公募投信の本数は5790本と、2014年末以来10年ぶりの少なさとなった、とのこと。
野村アセットマネジメントは2023年時点で700本あった投信を2030年までに半減させる方針を掲げています。大和アセットマネジメントも2024年7月1日付けの「お客様第一の業務運営における取組事例」において、2024年度の行動方針に「顧客本位の観点からの適切なファンドモニタリング、ファンド数削減を通じた運用体制の効率化を図ることでファンドの品質維持・向上に努める」とございます。

 こうした状況を受け、資産運用会社では徐々にプロダクトガバナンス関連の求人が発生してきております。募集部門は、商品開発部門、商品管理部門、リスク管理部門、法務部門など、募集企業により様々ですが、現時点ではほとんどの求人がプロダクトガバナンスに関する直接的な経験がなくとも応募対象になるケースが多いようです。直近では、会計系コンサルティングファームにおける金融機関向けの規制対応アドバイザリー経験者が「金融関連法令に関する基礎的な知識がある」という理由で資産運用業界未経験でありながら面接に進んだケースもございました。いずれの資産運用会社においてもプロダクトガバナンスの取り組みは新しい分野であるが故、キャリア入社者であってもルールや体制作りに関わることができる可能性が高い点が魅力かと思います。
 今後さらに当該求人の裾野が広がっていくことが予想されます。ご興味、ご関心を持たれた方はぜひ一度、ご相談ください。

コンサルタント 土井徹

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