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航空機リース市場の展望と、投資家向け営業求人ニーズの拡大

航空機リース市場の概要

 2024年11月、オリックスが航空機リース事業を強化するため、1,500億円以上を投資するということが報道されました。同社は主要事業のひとつとして航空機リースを位置づけ、積極投資により50機以上の機体を購入し、保有・管理する機数を倍に増やし、収益の倍増を目指す方針です。
 航空機リース市場は、航空業界の資金調達において重要な役割を果たしており、2023年時点で市場規模は約1,800億ドルに達していました。航空会社は購入に伴う巨額の初期投資を抑えるため、リースを活用する傾向が強まっています。現在、世界中で運航される航空機の約50%がリース機材であり、この割合は今後さらに増加すると見込まれています。世界的な旅客需要の回復により、特にアジア太平洋地域での航空需要が拡大していること、環境規制強化に伴い燃費性能の高い機材への置き換え需要が高まっていることが、リース市場の成長を後押ししています。

コロナ期からの市場回復

 遡ること、約5年前。「2020年は業界史上、最悪の年」との言葉通り、コロナ禍による航空需要の激減は航空業界に大打撃を与えました。新型コロナウイルスのパンデミックは国際的な渡航制限や需要の急減をもたらし、多くの航空会社が経営難に陥り、リース料の支払い延滞やリース契約の解約が増加しました。この影響で、航空機リース会社の財務健全性も一時的に悪化しました。(この時期のリース市場に関しては逆張りの勝負を狙う、航空機ファイナンス(2021年8月)で詳しく述べました)
 ところが2022年以降、ワクチンの世界的な普及や経済回復を背景に航空需要が急回復。特にレジャー需要とアジア地域での旅行再開が市場を牽引している状況です。また貨物機需要が高水準を維持していることも、リース市場の安定化に貢献しています。
 リース会社は、老朽化した機材を処分しつつ最新型機材の調達に重点を置き、ポートフォリオの再編を進めることで収益性を向上させています。リース契約の平均期間も回復基調にあり、投資家にとって再び魅力的な市場となっています。コロナ禍下の渦中に「これからはオペレーションリースの時代が来る」と25憶ドル(約2,700億円)を投じ、積極的なM&Aを行ってきたSMBCアビエーションキャピタルが現在、世界第2位の航空機リース会社としての地位を獲得していることからも投資家の評価、期待を窺い知ることができます。

富裕層向け投資としての航空機リース

 航空機リースは、航空業界の回復基調を受け、短中期的な収益機会が注目されるばかりでなく、安定的なキャッシュフローを提供するほか、ドル建て収益や資産の実物性などの特徴を持ちます。とりわけ、わが国においては購入選択付日本型オペレーションが含まれるため税制のメリットが得られることが富裕層や機関投資家にとって魅力的な投資対象となっています。こうした背景から国内金融機関も航空機リース事業を成長分野と位置付け、積極的な参入を進めています。

国内金融機関の取り組み

 大和証券グループがアイルランドの航空機リース会社エアボーン・キャピタルの日本法人に出資し、持ち分法適応会社にしました。同社が得意とするウェルネスマネジメント(富裕層ビジネス)において、安定利回りを得られる投資商品の拡充を狙ったもので、航空機リースファイナンスと富裕層の親和性を物語る好例と言えそうです。この潮流により、国内の金融機関は、海外の航空機リース企業との合弁事業を通じて市場参入を強化が加速しています。グローバルなリースネットワークやノウハウを活用しながら、富裕層や機関投資家向けに航空機リースファンドを提供し、収益基盤を拡大していく方針です。なかでもサステナブル航空機や貨物機を対象とした商品開発は喫緊の課題であり、ESG投資の観点から、持続可能な事業モデルの構築が急務とされています。

投資家向け営業求人ニーズの高騰と今後の展望

 こうした背景から、航空機オペレーティング・リース市場では投資家となる、機関投資家や富裕層向けの営業ポジションの求人ニーズが高まっています。
銀行、信託銀行、総合商社、航空機リース会社において航空機ファイナンス経験をお持ちの方をはじめ、富裕層を対象とした提案営業経験者が求められています。
単に資金調達の手腕だけでなく、高い提案力が期待されていることが特徴的です。とりわけ財務分析力を有し、投資リスクと対策を鑑みた提案営業ができる逸材は重宝されるでしょう。
 提案力においては、炭素対応をはじめとする環境規制が厳しくなる中、次世代機材やSAF(持続可能な航空燃料)対応機材のリースを積極的に支援することでファンド・スキームの拡大を図るなど、投資商品としての価値向上の施策が求められています。
 さらに航空機リースの投資に伴うリスクの明示化と、最適なリスク回避対策を講じることのできる財務分析力も重宝されます。たとえば、航空会社の破綻リスクにはリース先を分散させることでリスクを分散、市場需要の変動リスクには地域別需要動向を注視し、柔軟なポートフォリオ管理を実施、技術革新リスクには最新機材への投資を優先し、長期的な資産価値を維持するなど、ですが、財務分析力に実証されたソリューションが求められるばかりか、単なる「投資」にとどまらない、事業継承や将来の備え、節税対策など富裕層が抱える多種多様なニーズに対応する柔軟性も必要です。
 難易度が高い分、やりがいと将来のキャリアパスに直結する、多面的かつ高度な専門性が身に着くことは間違いありません。
持続可能な航空機技術や貨物機リースなど、新たな分野が市場を拡大させる一方で、富裕層向け投資商品としての多様化も進むと予測されるなか、国内金融機関の取り組みも加速しており、航空機リース市場は今後も成長を続ける見込みです。
 日本の投資家にとって新たな収益機会をもたらす、魅力的な選択肢を提案し続けるため、航空機オペレーティング・リースに関する専門性と税制に関する幅広い知識を身につけ、富裕層を対象とした交渉力、顧客力を磨くには、最強の場であり、機会といえるでしょう。ご興味をもたれた方はぜひ、ご連絡ください。

 コンサルタント 朝田恒平

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