最新情報News
大手日系金融機関の「海外戦略シフト」に伴う採用トレンド
2024年末、日本生命保険相互会社が保険業界としては過去最高額の1.2兆円を投じ、米系生保のレゾリュ―ションライフを完全子会社化すると報じられました。
遡ること約10年前、第一生命保険株式会社は2015年に米中堅のプロアクティブを買収し、それ以降、北米を中心に海外の事業拡大を進めていました。2026年度を最終年度とする中期経営計画では、グループ修正利益の4割となる1600億円を海外事業で稼ぎ出すことを掲げ、さらなる海外強化を打ち出しています。
4大生保のグループ基礎利益に占める海外事業の割合は第一生命保険株式会社30%、明治安田保険相互会社15%、住友生命保険相互会社10%、日本生命保険相互会社は4%です。当時、相互会社である日本生命保険の海外事業が「ようやく重い腰をあげた」と評されたのはそのためでしたが、その後日本生命保険相互会社はさらに米国などで2兆規模の企業の合併・買収を進め、海外現地法人の新設などによる経営管理体制の積極的な強化を図っています。事業投資額は2035年度に向け、4兆円程度を想定していると言われています。
このような「海外戦略シフト」強化に伴い、大手日系金融機関における人材流動が加速しています。実際、新卒採用では専門人材の獲得に追いつかず、即戦力となる中途人材確保が急務となっているのが現状です。
おもな求人ニーズは企業買収、成長戦略を担う「攻め」のポジションと、買収後の統合・管理を担う「守り」のポジションに大別されることが特徴的です。これは「攻め」と「守り」の両輪での人材強化が不可欠だということにほかなりません。
具体的に挙げてまいりますと、「攻め」のポジションでは
・海外事業戦略、新規事業戦略に資する情報を入手、分析した上で業界、市場トレンドを予測し、経営陣に有益な情報提供を行う、または海外事業戦略の立案を行うマーケット調査、
・企業価値算定(銀行窓販、販売提携契約などを含む)に関するモデリング、M&Aに関するストラクチャー検討、デュー・デリジェンスに関する支援など国内外のM&Aや組織再編、販売提携などに係るバリュエーション業務、
・エグゼキューション、海外戦略・事業企画、海外駐在を確約する法人営業やクレジット投資などの運用ポジション
などでのニーズがあります。海外駐在においては入社後半年~1年後に海外勤務となる可能性があり、ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、ケイマン、ルクセンブルグなどグローバルに展開しています。
「守り」のポジションにおいては
・M&A後のPMI、
・買収先の子会社の経営管理・運営サポート、
・リスク管理(定性、定量)、
・内部統制、内部監査、法務コンプライアンス
などの求人ニーズが急騰しています。
求職者の転職動機はさまざまです。「事業会社で働きたい」という志向をおもちの投資銀行や戦略コンサルで経験を積まれていた方だけでなく、「これまでの働き方を見直し、ワークライフバランスの改善を図りたい」という方もおみえになります。
ポジション増加に伴う、多様な選択肢(たとえば年収やポジションの向上、異業界へのチャレンジなど)により、候補者は多面的に吟味し、自身だけでなく、家族も納得した上で転職先を選ばれる傾向が強くなっています。
即戦力となる経験者を獲得するにあたり、採用企業側におかれましては魅力的なキャリアパスを提供し、受け入れる準備ができるかどうかが試されているといえるかもしれません。
たとえば、「攻め」のポジションであれば、経営企画や事業企画部門、海外駐在などへのキャリアパスの可能性があるかどうか、「守り」のポジションであれば、ガバナンス・リスク・コンプライアンス領域内での柔軟な異動や海外駐在の可能性の有無を明示することができるかどうか。それが優秀な人材を獲得できるか否かの分かれ道になりそうです。
弊社、KANAEアソシエイツはこれまでの転職事例を通じ、キャリアパスの可能性については転職者様、採用企業様、双方にとって有用な情報をご提供させていただきます。ご興味をおもちの方は、ぜひご相談ください。
コンサルタント 兵藤正憲