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3ラインモデルの明示化に伴う、新たな求人ニーズの高まり
近年、金融機関において、内部監査人協会(IIA)が提唱する「3ラインモデル(Three Lines Model、旧Three Lines of Defense)」を意識したガバナンス・マネジメント体制整備が急ピッチで進められています。この潮流は、2020年7月にIIAが「3ラインモデル」を公表し、それまでの「3つのディフェンスライン」に関する見解を改訂したことに遡ります。
具体的にそれぞれのラインとその役割をみていきますと、
▶第1のライン(1線)は、事業運営部門です。
営業、企画、オペレーションなど現業部門が含まれ、収益向上のためのビジネス推進と管理を担うと同時に、リスクの発生源でもあります。自らがリスクオーナーであることを意識しながら、コントロール(リスクの識別、評価、低減努力、内部統制プロセス維持など)に直接的な責任があります。
▶第2のライン(2線)はリスクマネジメント・コンプライアンス領域です。
第1線の活動に対し、リスク管理のプロセスが適切に設計・運用されているかをモニタリングし、必要に応じて支援、助言、監督を行います。法務や財務部門などを含むかどうかは組織設計によって異なりますが、いずれも独立したチェック機能としての役割を担います。
▶第3のライン(3線)は内部監査部門です。
1線・2線の業務を独立した立場から客観的に監査し、ガバナンス・リスクマネジメント・内部統制全般について保証と助言を行う役割をもちます。
これまでの考え方と上記の「IIAの3ラインモデル」を比較しますと、相違点は3つあります。ひとつは「ディフェンスライン」から「3ラインモデル」へと呼称が改められたこと、2つ目は、組織体のガバナンスに関する役割分担の見解が明示されたことです。そして3つ目は、1線と2線の協働がより強調され、境界のとらえ方が従来よりも柔軟になったことです。
3線それぞれの役割が明確化された結果、1線と2線の現場では、攻めと守りの立場からの見解の相違が際立つ中で、どう折り合いをつけていくかが課題となっています。その結果として1線の業務と2線の職務を円滑につなぐ「仲介役」としての人材の必要性が自然に浮上しており、いわば「1.5線」ともいうべき人材への注目が高まってきました。
これまで生命保険会社や証券会社で営業職を統括していた管理職経験者が、「営業管理部長」あるいは「コンプライアンスオフィサー」といったポジションで歓迎され、1線から1.5線へと転身されたケースも実際に増えてきています。
もっとも組織の在り方は多様であるため、「ポジション」や「役職名」などはさまざまです。いずれにせよコンプライアンス・リスク管理体制の強化を目的とした責任分担や機能分化はさらに広がっていくと予測されます。組織の実情に合わせた最適な体制を構築するため、さまざまな取り組みが求められるフェーズにおいて、1.5線の役割を担える人材の需要は今後もしばらく続くと考えられます。
ここで特筆すべきは、営業としてこれまでキャリアを築いてこられた方が、ご自身の今後のキャリアを考えた時に、営業統括という選択肢のみならず、今後はコンプライアンスやリスク管理といった領域への転身の可能性が少なからずある、ということです。従来であれば経験者にしか開かれていなかった管理・リスク部門への門戸が、境界線が柔軟にとらえられる中で徐々に開放されていくことで、営業職のキャリアの裾野が今後広がっていく可能性も充分に考えられると思います。
金融業界で内部管理(監査)、コンプライアンス関連の業務経験を有している方、金融機関(銀行、証券、保険など)にて営業管理職として実務経験が豊富な方で、コンプライアンス業務にご興味がある方は、ぜひ一度、ご相談ください。
コンサルタント 小山田 睦実