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30代リテール営業、3つの選択肢で考察するキャリアの分水嶺

 証券・銀行・保険などのリテール営業としてのキャリアを順調に積まれてきた方の多くが、30代というひとつの大きな節目を目前に、転職を意識されることが多いようです。
 将来のキャリアを見据える時、5年後、10年後の自分のキャリアの輪郭に確信が持てず、漠然とした不安感から「いまよりもっと自分を輝かせる場所があるのではないか」という逡巡が生まれ、自分にとって最適なキャリアの軸足が見えにくくなってしまうこともこの年代の特徴と言えます。多かれ少なかれ、誰しもが経験する、安定的なキャリア構築に暗雲が立ち込め、迷いが生じる「分かれ道」であることは間違いないようです。
 デジタル化とコスト削減の流れを受け、支店の統廃合が進んでいる昨今、「このまま個人営業を続けていけるのだろうか」という漠然とした不安感は以前にも増して濃くなっているのかもしれません。
 
 そこで、本稿では代表的な3つの方向性を示すことで、リテール営業経験者がこの先、10年後の「キャリアビジョン」を明確に思い描けるように、それぞれの選択肢に向けた準備のためのヒントをお伝えしていきます。
 
 リテール営業経験者の方へご提示できる方向性は大別して3つあります。
「このまま個人営業を続ける」、「マネージャーを目指す」、「別の業界にチャレンジする」。
それぞれ解像度をあげるため、詳しく説明していきます。

1.プライベートバンカーという選択

 個人プレイヤーを極めるという方向性です。「法人オーナー・超富裕層特化型営業」を目指す、リテール営業としての選択肢です。昨今のデジタル万能の潮流とは対照的に、超富裕層への本格的な提案には常に「人ならではの付加価値」が求められます。支店が減り、AIに代表されるテクノロジーが提供するサービスが日々、更新される中、人でしかできない手間とテクノロジーを凌駕する構想を併せ持った、複雑かつ斬新な提案を提供し続ける。こうした大変高度な能力が求められますが、ひとたび顧客の全幅の信頼を得ることができれば、信託や相続、不動産、さらには非金融サービスを絡めた法人・富裕層対応など、リテール営業として継続的で多様な活路を自ら切り拓いていくことの面白さ、醍醐味があります。まさに“対面の価値”を活かせる選択肢です。

2.チームを束ねる「マネージャー職」へのステップアップ

 これまで個人プレイヤーとして一線を画してきた方が30代前半に、マネジメント職に就く、という方向です。「転職して転身」という方向性と比べると、非常に現実的な選択肢のようですが、営業成果だけで評価される時代はすでに過去となった今、次の「マネージャー職」へステップアップを図るには必要不可欠なプラスαが存在します。現在、管理職に求められるスキルには「人を見る力」「育成力」「KPI設計」が挙げらえれます。これこそが評価対象になりつつある、とさえ言えます。卓越した営業スキルや、いわゆるトップダウン型で部下を従わせるかつてのリーダーシップが疎んじらる現在、部下に共感できる「寄り添い型」のリーダーシップが大きな価値となっています。ただし、デジタル化による支店数の減少により管理職ポスト減少の可能性も否めず、ポジションとしては今後、狭き門となることが予測されます。

3.デジタル化対応型で「近接業界」や「異業種」への転身

 3つ目の選択肢は「近接業界」や「異業種」への転身です。
 三井住友フィナンシャルグループの「Olive(オリーブ)」、三菱UFJフィナンシャル・グループの「エムット」などが個人向け金融の進化系を展開しているように、金融サービスのデジタル化、アプリ化が進む中、周知のように金融の“顧客接点”自体が変容しています。
 こうしたデジタルトレンドを牽引する金融サービスに携わったリテール経験を活かせる転職先として注目されているのが、デジタルトランスフォーメーションや相談サービスを拡張する「金融プレイヤー」です。ここではイメージしやすいように楽天証券が展開しているデジタル相談サービス「アドバイス・プレミアム」を例にご紹介していきます。

 「アドバイス・プレミアム」は資産預かりが1,000万円以上の顧客を対象としたオンライン相談サービスであることが特徴的で、FP資格を持つアドバイザーや提携先と連携し、運用、相続、不動産、保険など幅広い相談を提供するのが「金融プレイヤー」です。
 2025年1月時点で口座数は国内証券会社単体で最多1,200万口座超となり、預り資産残高は36兆円超。多くの投資家に支持されており、いまなお口座開設者の年齢層が上昇中。
 楽天証券の決算資料に目を通すと、新規口座開設者には40代~50代の割合が相対的に増加していることは見逃せません。これに伴い、資産形成のみならず、セカンドライフや相続の相談需要が高まっている状況は明らかです。ここに挙げた楽天証券の事例は氷山の一角であり、未来を先取りする金融サービスの企画開発需要は多岐に渡ります。IT部門や外部デジタルリソースを活用した金融機関内の新規事業の立ち上げも増えており、「デジタル×金融」の最前線で新しい営業企画、開発、プロジェクト推進を担える人材の需要が今後ますます高まることは容易に想像できます。こうしたサービスはリテール営業経験者にとっても、自身の得意分野を広げることで充分に活躍が期待できる領域と言えます。
 よりクリエイティブな提案をしたい、ゼロからイチを形づくる経験をしたい、顧客の課題に具体的なソリューションを提案したい、という方にはお勧めです。

キャリアの解像度を上げよう。「選ばないリスク」より「選ぶ勇気」を。

 最後に。「選択肢が多すぎて選べない」。これは転職相談にお見えになる30代がよく口にするお悩みですが、そこで思考停止して、選ばないまま時間が過ぎていくことこそ、最大のリスクとお伝えしたいです。
 そんなとき、私はいつも「あなたが次の10年間、キャリアで大切にしたいことは何ですか?」と転職者に尋ねます。
「プレイヤーとして“もっと深く提案したい”のか」
「マネジメントで“人を育てる喜び”を感じたいのか」
「環境を変えて“新しいフィールドで力を試したい”のか」

 今日挙げた3つの方向性は日ごろ転職相談の現場で対話をしながら、見えてきた選択肢です。転職相談を通じて、自分の思考パターン、強み、やりがいを感じた瞬間を丁寧に振り返ることで、キャリアの“解像度”が上がります。過去の延長線から「何ができるか」を考えるのではなく、未来から逆算し「どうなりたいか」を起点に最適な選択をしていきませんか。
 3つの選択肢のうち、1と2は熟考の末、「転職しない」ことが最適な選択になることもあるでしょう。私自身、銀行でリテール営業をしておりました経験から「転職したほうがいいか」「転職せずに現状で道を切り拓く」で迷われるお気持ちはよくわかります。その時の迷いから得たこと、いまだから気づける「キャリアの分水嶺」が、もしかしたら、あなたのお役に立てるかもしれません。いちど、立ち止まって自分のキャリアを内省したいという方はぜひ、ご相談ください。

 コンサルタント 畑山良太

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