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資産運用業界の構造改革: 「執行者(エグゼキューター)」から「設計者(アーキテクト)」への変革

「運用の空洞化」への警鐘とプロダクトガバナンス

 「資産運用立国」という号令のもと、金融庁は「プログレスレポート」において、日本の資産運用各社に対し、投資家が負担するコストに見合った付加価値を真に提供できているかという本質的な問いを繰り返し投げかけてきました。とりわけ注視されているのは、一部の日系資産運用会社で課題として指摘される、外部委託(サブアドバイザー)活用に伴うガバナンスと評価体制のあり方です。
 それは商品の価値分析を外部に委ね、実質的にはアセットアロケーター(配分者)の役割に留まっている現状では、ガバナンスの観点から「運用の空洞化」を招きかねないという警鐘でもありました。そのため、業界では自らリスクを取り、独自の投資哲学を具現化できる「インハウス(自社運用)体制」の再定義を急ピッチで推進しています。
 先述の構造的課題解決に対し、アセットオーナーが受益者のために最善の運用委託先を「選択する」視点から、より優れたアセットマネージャーを「発掘する」ことが望まれることは言うまでもありません。一部の日系資産運用会社ではすでに、従来の年功序列的な枠組みを超えた「高度専門職向けの柔軟な待遇提示」によって、トップ層の人材確保に動き出しています。

熾烈化するプロフェッショナル人材の獲得競争

 
 野村ホールディングス(HD)が傘下の野村アセットマネジメント(AM)社長にJPモルガン・アセット・マネジメント元社長の大越昇一氏を充てた人事を発表したことはその象徴的事例とも言えるのではないでしょうか。
 外資系証券で日本株戦略の筆頭を担ったトップストラテジストを、日系資産運用会社が専門職のフロントランナー(シニア・ストラテジスト)として招聘した一事です。最高峰のマーケット知見を「自社運用」の核心に据えるこの越境的な動きは、日系資産運用会社が真のプロフェッショナル集団へと脱皮しようとする変革の意志を市場に強く印象づけました。また、三菱UFJ信託銀行が運用成績に応じて年収最大6,000万円規模を提示する「プリンシパルファンドマネージャー制度」を導入したことも、日系金融機関が専門性に対して適正に報いる新たなフェーズに入ったことを示唆しています。

多様化する投資フロンティア:物理AI、RWA、そしてオルタナティブ

 さらなる喫緊の課題として特筆すべきは投資領域の急速な高度化です。
 DC(確定拠出年金)市場でのプライベート資産の活用に向けた議論・検討や、現実世界を動かす「物理AI」関連投資、ブロックチェーンを用いた「RWA(現実資産)のトークン化」など、新たな投資テーマとして注目が高まっています。これらの商品の目利きには従来の財務分析を超えた高度な専門性が要求されます。運用の高度化という不可逆的な潮流が拡張する中、運用機関においてはプロダクトの運用パフォーマンスやコストに対する要求水準がさらに高まるのは必至であり、アセットオーナーが抱える高度化への要請を踏まえたサービス提供も当然求められるはずです。この時、外部に丸投げするのではなく、不可避的に生じる複雑なリスクを自社で解読し、プラスアルファを創出できる人材の確保こそが、2026年の市場における重要な競争軸となっています。
 運用力の底上げに向けて、今後はプロフェッショナル人材の獲得競争が一段と激しくなる可能性があります。そうした中、外部コンサルタントの活用だけではなく、運用基盤、プロダクト、人材、販路を一体で強化する手段として、M&Aを選択肢に組み込む企業も増えていくと思われます。野村ホールディングス(HD)が、オーストラリアの金融大手マッコーリー・グループの米国および欧州で展開する資産運用事業(パブリック・アセットマネジメント事業)の買収を2025年12月に完了したことは、そうした方向性を示す事例の一つといえるでしょう。

「エグゼキューター」から「アーキテクト」へ

 私どもエージェントの元には現在、外資系から日系へと目を向けるトップタレントからの相談が増えています。外資系日本拠点がグローバル戦略の「執行(エグゼキュート)」を担う傾向を強める中、「日本発の運用哲学を自ら設計する」という気概をもち、「設計者(アーキテクト)」としての大きな裁量を提供し始める日系大手への転向を志すプロフェッショナル人材が目立ってきました。日系のインハウス部門に惹かれる理由が、必ずしも報酬面だけに拠らない共通点があることが特徴的です。それは「組織の看板に依存するのではなく、自らの専門性で組織の看板を創り変えたい」という思いがあることです。プロフェッショナルの矜持と言えるかもしれません。こうした矜持に応える環境が整いつつあり、求人ニーズも増えている現在、チャレンジしたい人にとってはチャンス到来と見るべきでしょう。
 

「第4の柱として」

 2026年現在、日本の資産運用業界は「企業タイトルの時代」から「実力と専門性の時代」へと大きく舵を切っていることは間違いありません。資産運用業界が銀行、保険、証券に次ぐ「第4の柱」として自律するために「自走力」を備え、新しい価値を創出していく。資産運用業の転換期ともいえる今、KANAEアソシエイツはその最前線を担うトッププロのみなさまの一助となる選択肢をご提案致します。ぜひご相談ください。

 コンサルタント 朝田恒平

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