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2017年度上半期/金融業界求人動向総括

銀行・信託銀行

「長引くマイナス金利政策の影響により、2017年3月期の地銀82行の連結決算の8割が、対前年比で減益。」そんな報道で幕を開けた2017年上半期でしたが、この半年の求人動向を振り返りますと、総じて銀行の採用ニーズは減少。特にリテール関連求人が伸び悩む一方で、信託銀行および投資銀行ビジネス関連の求人ニーズは継続的に旺盛でした。この傾向は現在も変わらず続いています。

各行とも、より専門的なアドバイザリーサービスやコンサルティングサービスを強化する動きが顕著にみられたことが特徴的です。それに伴い、M&Aやストラクチャードファイナンス、航空機/船舶ファイナンスなど高度な専門性を要求される求人ニーズが増えてきました。

また信託銀行の多くが富裕層ビジネスの拡大に軸足を移したことも、この上半期の顕著な動向といえます。超富裕層を顧客とするプライベートバンカーの求人ニーズが高騰しましたが、極めて限られた経験者をめぐる争奪戦は予想以上に難航し、採用は概して芳しいものではありませんでした。

フィンテック関連ではブロックチェーンを中心とした新規事業の求人ニーズに加え、ビッグデータ解析を駆使したマーケティング関連業務の求人が増加しています。今後、2030年までにフィンテックビジネスを完遂させるためには約280万人のIT金融エンジニアが必要であると予測されていますが、人口減少の環境下、慢性的な人材不足は避けらず、大きな懸念となっています。特に若手人材の育成は喫緊の課題といえそうです。こうした人手不足の代替えとして改めてAIに期待する向きもあるようです。

監査およびアンチマネーロンダリング関連の求人は引き続き堅調でしたが、サブプライム以降の就業人口構成の歪みによって生じている慢性的な「30代の人材不足」という懸案事項を浮き彫りにした一面もありました。従来、シニアクラスの人材が従事することの多かった監査のポストにおいて、現行求められている監督官庁の監査レベルに耐えうる専門性を持ったスペシャリストが圧倒的に不足しています。この人材不足を補うため、外部から専門家を採用する動きが顕著になった半年でしたが、この流れは今後も続きそうです。

資産運用

投資家・年金向けのセールス、プロダクトスペシャリスト求人のニーズが常時あった一方で、リテール・公募投信の採用ニーズがあまり聞かれないという対照的な動きが半年間、続きました。この背景には昨今、運用環境の大きな変化に伴い、機関投資家の多くが国債偏重であった従来の運用体制の見直しを迫られていることがあげられます。とりわけ外債、オルタナティブ(FOF、HF、PE、不動産、インフラ)に代表される新たな投資機会に向かわざるを得ない状況の中で、これらの投資案件を運用できる専門性を有したスペシャリスト人材が必要となりました。社内では調達が難しいため、外部から採用する傾向が際立ってきました。先述のオルタナティブ投資に加え、クレジット投資が増えていることからもマイナス金利の影響の大きさを窺い知ることができます。

特筆すべきは不動産投資信託(私募REIT)の規模拡大でしょう。4割拡大の機運に乗り、膨大な求人ニーズが発生しています。2020年東京オリンピック開催の需要の追い風に加え、上場しているREITを筆頭に物件の獲得競争が相次ぐばかりか、運用手法の透明性が海外投資家に評価されていることも不動産価格の上昇と人気の高止まりの一因となっているようです。

この気運に乗り、地方銀行も不動産投資案件に資金投入を行う一方で、事業会社の海外進出支援や事業承継、国債分散投資などに積極的に取り組んでいます。低金利による利ざやの縮小は新たな収益を求めるプロセスにおいて、保守的といわれてきた銀行の文化や慣習を根底から覆す革新的な変化を、思いがけず、強いているかのようです。

このような状況の中、専門性に特化したスペシャリスト求人ニーズが高騰しているのですが、高度な専門性を有した経験者は限られています。こうした需給バランスの中で、スペシャリスト人材を獲得するためのコストは上がる傾向にあります。高額な年収提示が出来ないがために、人材獲得の機会を失うケースも少なくありません。一方で、従来の給与体系の抜本的な見直しを行うなど大きな変革に踏み切ることで新たな機会創出につなげる事例も数多くあります。自らを変えることが出来た企業から成功している。そんな兆候があることも事実です。

証券/投資銀行

マイナス金利の影響下、商業銀行のRMの求人ニーズの減少とは対照的に、銀信証一体化経営のメガバンク系列において、証券子会社のあらゆるセクターでカバレッジバンカーの求人ニーズが高騰しています。にもかかわらず、証券経験者がなかなか動かなかった半年でした。投資ビジネスにおける優秀なインベストメントバンカーの獲得合戦はさながら“War for Talent”の様相を呈していたと言っても過言ではありませんでした。

ただでさえ経験者が少ないことに加え、昨今は大手総合商社が採用競合となり、意欲旺盛に人材獲得を行っていたため、MAバンカーや戦略コンサルの経験者が商社へ転身するケースが相次いだことも採用苦戦の一因といえるかもしれません。

また地方銀行や保険会社は機関投資家としてファンド投資にシフトする動きを強め、余剰資金によるファンドレイズや事業会社への投資も目立ちました。これに伴い、若手から中堅層に至るまで、幅広い層でスペシャリストへの求人ニーズが生じましたが、こちらもいまなお獲得競争は熾烈を極めています。

金融業界全般

金融業界全般に言えることと言っていいと思いますが、企業の求人ニーズに対して、求職者が圧倒的に少ない。こうした需給関係の極端なアンバランスはサブプライム以降の採用抑制の皺寄せとして露わになってきた感が否めません。しばらく新卒採用を控えたことが、今になって中堅層(30代)の人材不足を引き起こしているのです。

最後に。あらゆる領域においても女性の管理職求人が増加したことも2017年、
上半期の特徴的なトレンドとして追記致します。
 
KANAEアソシエイツ株式会社 代表取締役 阪部哲也

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