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「オルタナティブ資産の民主化」本格始動に伴う求人ニーズ

 日本市場において、オルタナティブ投資商品が個人向けに販売される動きがここ数年、顕著に拡大しています。本稿ではその背景と日本市場での動向に伴う求人ニーズについてお伝えしていきます。

 岸田首相は昨年9月ニューヨークで投資家向けに日本の資産運用業の強化へ海外勢の参入を促すための「資産運用特区」を設けると表明しました。資産運用立国については、新しい資本主義の下、我が国の家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、更なる投資や消費に繋がる、成長と分配の好循環を実現していくことが重要とされています。
 直近では2023年11月末に米金融大手ゴールドマン・サックスの資産運用部門トップのマーク・ナックマン氏が主力の投資銀行部門と連帯し事業拡大する方針を日本経済新聞の取材で明らかにしたことが報じられました。遡れば、2022年7月に商業用不動産では世界最大のオーナーであるブラックストーンが日本で個人向け商品の拡充を目指すと表明したことを皮切りに、海外ファンドの参入が相次ぎました。2022年同月には三井住友トラスト・ホールディングスがアポロ・グローバル・マネジメントと提携協同し、未公開株や不動産などこれまで機関投資家向けであった金融商品を個人に提供するための開発に乗り出し、2022年11月にはみずほ証券が米債券運用大手ピムコと組み、「プライベートクレジット(非公開融資)」のファンド販売開始、三菱UFJモルガン・スタンレー証券もプロ向け商品の小口化を発表しています。2023年3月ブラックストーンと大和証券が連携し日本市場で個人を対象に公募投信を提供開始、同年9月には米国KKRとSBI証券が新会社設立と、枚挙に遑がないほどです。

 「オルタナティブ資産の民主化」とはこれまで機関投資家や富裕層が主にアクセスしてきた、プロ向けのオルタナティブ投資を一般の個人投資家がより容易にアクセスしやすく、参加できるようになる現象を指す言葉として使われ始め、短期間で一気に定着した感があります。
 テクノロジーの進化もこの拡大を後押ししています。インターネットでオンラインプラットフォームやアプリを介し、個人投資家はより簡単にオルタナティブ投資にアクセスできるようになりました。わが国でもLUCAジャパンやSAMURAI証券などのフィンテックベンチャー企業の台頭によりクラウドファンディングプラットフォームが広く一般に開放され、個人が小額からオルタナティブなプロジェクトや企業に資金提供することが可能になっています。

 未公開株や不動産などのいわゆるオルタナティブ資産は上場株式や投資信託、債券などの金融商品と組み合わせることで高いリターンを狙うことができる反面、最低投資額が大きく、長期スパンのみの解約しか許されない停留資産とも呼ばれ、購入は大手の金融機関や保険会社に限られていましたが、欧米のファンド運用会社は近年、個人でもオルタナティブ資産に投資できるよう最低投資金額を引き下げ、小口化分散し、四半期ごとに解約のタイミングを設けるなど流動性をもたせ、投資しやすい商品にするべく、積極的に開発に取り組んできました。いわゆる伝統資産とよばれる金融商品以外の新味の商品を常に探しているプロの個人投資家の間では歓迎され、オルタナティブ投資は一般的となりましたが、今後は投資に馴染みのない人や経験の浅い個人投資家にも購入しやすい商品にし、幅広い資金の呼び込みが狙いです。
 周知のように、日本の個人金融資産は約2000兆円と言われていますが、仏コンサルティング会社キャップジェミニの調査に拠れば、2022年時点でその54.2%が現預金に偏在しています。この日本の潤沢な眠れる個人金融資産は海外ファンドにとっては魅力的に映るため、一部の国では、規制当局がオルタナティブ投資に関する規制を見直し、一般の個人投資家がオルタナティブ資産へのアクセスすることを加速させる向きがあります。
オルタナティブ投資信託を採用するETF(上場投資信託)の増加により、個人投資家がより低い手数料でオルタナティブ投資に参加できるようになったことも見逃せません。
 規制の変化もオルタナティブ資産へのアクセスを拡大する方向に動いています。ただし、これには十分なリスクディスクロージャーや保護措置が求められます。個人投資家に多様な選択肢を提供し、ポートフォリオの多様性を向上させる一方で、リスク管理や専門的な知識の必要性にも注目が必要だといえます。投資に関する決定をする際には、慎重な検討と専門家のアドバイスがますます重要になってくるでしょう。

 こうした状況を受け、求人のマーケットにおいては、オルタナティブ投資信託ビジネスの拡大を目的とした増員ニーズが増えています。現状は主に商品企画における外国籍投資信託組成業務のニーズが目立ちます。関係法人と協力をしつつ、外国籍投信の組成業務を行う業務で、ポジションとしては管理職から担当クラスです。国内外で外国籍投信の組成経験がある方、CMA、CFAなど証券関連の資格保持者は歓迎されます。
アセットマネジメントサイドの投信ホールセラー(法人営業)の求人ニーズも顕著です。各社ともに日本市場におけるオルタナティブ投資の拡充を商機とみなし、巨大市場化へ向けた動きが揃い踏みする中、転職の選択肢も増えているのでチャンスといえます。
今後さらに求人の裾野も多岐に渡り広がってくることが予想されますので、引き続きウオッチして参ります。ご興味を持たれた方は一度ご相談下さい。
 
 コンサルタント 朝田恒平

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