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金利上昇で変わる金融人材の評価軸
マイナス金利政策が終わりを告げ、「金利ある世界」へ移行してからそろそろ1年半が経とうとしています。その流れに伴い、金融機関の採用ニーズも日々、変化してきました。
本稿では「金利上昇」が金融業界の採用動向にどんな影響をもたらしているのか、採用現場における変化の実感を求人ニーズが特に高騰している運用市場と企画管理部門を例に、お伝えしていきます。
運用市場部門における採用ニーズ
「金利ある世界」が追い風となり、運用市場部門における採用ニーズが高まっています。
主に、債券運用、トレーディング、ALM(資産・負債総合管理)、市場リスク管理などの部門で人材需要の高騰が目立ちます。こうした需要の背景については日本銀行の金融システムレポートが詳しく示唆していますが、金融機関が旺盛な資金需要に積極的に応需するもとで、国内・海外向けともに貸出が増加する一方で、金融仲介活動の過熱がもたらす融資、貸出リスクに対しても先行きの動向を注視する必要性があることから、とりわけ、金利変動による損失を防ぐリスク管理や、その手段としてのデュレーション短縮など「リスク管理・ALM」人材が求められています。
中東情勢の影響がもたらす経済動向や物価指数など、不確実性要因の懸念も考慮したうえで、長期的かつ包括的な資産設計やポートフォリオが描ける人材が期待されているわけですが、特筆すべきは、大手アセットマネジメント会社などでは現在、即戦力となる人材だけでなく、ポテンシャル採用の動きも見られるようになっていることです。たとえば、資産運用会社における国内外債権・為替のトレーディング業務の経験が3年未満であっても、TOEIC®600点以上の英語力がある方、証券アナリストの有資格者であれば、歓迎されるケースも増えてきました。
これまでは即戦力となる専門性を図るとき、「経験3年以上」という尺度を目安にしていましたが、金利上昇に伴う人材獲得競争の激化により、3年を満たなくても何かしらの強みがあれば充分、採用検討の可能性が生まれていること、また候補者の評価基準の「幅」を広げる動きがみられるようになっていることは強調しておきたい点です。同時に、コロナ禍を挟み、長らく続いた「低金利」が招いたキャリアギャップも見逃せません。金利変動を経験していない中堅層にキャリア形成機会の偏りが生じた結果、金利がある時代のかつての実務経験が改めて評価され、シニア層が重宝されるケースも少なくないのです。
企画管理部門における採用ニーズ
2026年初頭に三菱UFJ信託銀行が金利上昇を背景に4年間で1.6兆円の倍増を目標に、将来性の見込めるオルタナティブ資産の拡大を打ち出したことは記憶に新しいことと存じます。あの報道以降、各社で収益構造の見直しや経営戦略の新たな舵切りが加速的に進みました。金利の変動によるこうした経営環境の変化を背景に、経営企画や主計部門では資産運用を踏まえた予算策定や経営管理の重要性がますます高まっています。企業内の資本政策や予算、運用計画の変更など経営企画の求人ニーズは今後しばらく堅調と思われます。また、オルタナティブ資産は流動性に規約があるとはいえ、商品設計や販売チャネルの工夫次第で成長の余地があると、多くの投資家に期待されている分野です。この追い風を受け、商品企画関連の人材採用強化が急がれています。
とりわけ円建てインカム商品の拡充や、クレジット投資への関心が集まるなか、日本ではまだプライベートクレジットを手掛ける資産運用会社が限られているため、市場開拓という重要課題に加え、市場動向とリスク管理の強化という両輪を同時に推進することが喫緊の課題です。
ますます多様化する投資家のニーズに応えるため、より複雑で高度な商品組成ができる人材が求められることは言うまでもありません。そのため、商品企画単独の経験だけではなく、運用・営業推進・リスク管理など隣接領域の経験の掛合わせによって生まれる発想や、新たな相乗効果など、求められる「強み」も多様化していることが特徴的です。さらに、英語力や有資格者であれば尚可という評価も多く見られます。
評価基準の「幅」が広がっている採用の現場
採用の現場で実感している変化を一言で表すなら、採用企業の評価基準の「幅」が広がっているということでしょうか。求められる専門性が多様化するなか、一見、「募集要件の緩和」と受け取れるようなポテンシャルを重視するケースも少なくありません。
一方で、転職相談にお見えになる方からよく聞かれるのは「いまの経験に何をプラスしてキャリアを築いていけば市場価値が上がりますか」というご相談です。このご質問には、これまでのご経験と3年先、5年先を見据えた今後のキャリアパスに関するご本人のご希望を伺ったうえでなければお答えしかねるのですが、「金利上昇」の影響で評価軸に「幅」が生じている現在は、市場の評価につながる「選択肢」が確実に増えていると言えます。ご自身の専門性という主軸に、いま何をプラスすれば、さらなる相乗効果を期待できる、付加価値となり得るのか。これからのキャリアを考える上で、どんな可能性が考えられるのか。一度、立ち止まって検証する機会をお持ちになってはいかがでしょうか。ご興味を持たれた方はぜひご相談ください。
コンサルタント 小山田睦実

