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売り手市場化で増加する「内定辞退」にどう対峙するか

 先月29日に発表された6月の有効求人倍率はバブル期前後の水準に並び、話題になりました。東京都は前月比0.02ポイント上昇の1.56倍を記録し、深刻な「人手不足」の問題があちこちで露呈しています。
 三菱東京UFJ銀行は約1万人以上の契約社員の雇用を60歳まで保証すると先ごろ発表しました。長く働ける環境を作り、優秀な人材をつなぎ留めようと各社対応に追われています。

 こうした中、金融マーケットにおいても、拡大する事業会社の資金需要を背景にした大手銀行によるコーポレートファイナンス経験者採用ニーズ、株高を受けた証券や資産運用会社の体制強化のための採用ニーズをはじめとして、求人の増加が顕著です。

 さらに「金融処分庁から金融育成庁へ」という表現に象徴される金融庁の姿勢変化がビジネスチャンス拡大の恩恵をもたらしていることや、資産運用会社における投資顧問業務から投資信託ビジネスへのシフト、地方銀行における業容拡大・合併など、変革を強いられる流れも採用活動を活発化させていて、金融業界全体が、優秀な人材をいかに獲得するかという”War for Talent”の状態にあるといえます。事実、採用・転職市場においては特定ポジション、特定職種の候補者に対し、複数のオファーが殺到しています。売り手側の選択肢が潤沢に用意されている状況下、結果として、最終段階での「内定辞退」が続出することになります。

 サブプライム以降、2013年頃まで続いていた「買い手市場」の採用ルールは過去のものとなりました。
 こうした新たなトレンドをいち早く察知し、人材獲得こそ戦略上重要な経営課題と自覚している組織においては、例えば外資系コンサルティング企業に年収水準サーベイを依頼し、業界内での自社の賃金水準を上位25%以内に保つことで採用の優位性を維持するなど、ケアを怠りません。現に今、企業側のこうした取り組みは確実に増えており、今後、ますます求められるようになるでしょう。

 サブプライムで減給や転職を余儀無くされた方々の年収相場もかつての水準に戻りつつあり、出戻り転職者も増えています。優秀な人材はスカウトされ、転職していくケースは必然です。いまこそ自社の採用競争力を高めるため、相対的な観点で採用条件を見直すなど、人材獲得に関する経営レベルでの戦略的意思決定が必要ではないかと思われます。

 2014年の猛暑は、こうしたシビアな採用競争を象徴しているかのようです。   

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阪部 哲也

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