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ESG投資で拡がる、採用の新たな潮流

 新しい年、2020年も地球規模の環境問題・社会課題の解決に向けた、各方面の実質的な取組が加速する一年になりそうです。ESGの観点を投資の意思決定に組み込むことを提唱した「国連責任投資原則(以下PRI)」に、昨年新たに署名した日本の機関は、三井住友信託銀行、明治安田保険相互会社、国立大学法人東京大学、エーザイ企業年金基金など16に及び、日本の全署名機関は80となりました(2020年1月9日時点。PRIデータベースより)。こうしたESG推進のトレンドは、求人動向にも影響をもたらしています。

 私が「ESG投資で拡がる、キャリア形成の新たな機会」と題したレポートを掲出したのは2018年5月のことでした。当時はESGに関する求人ニーズの高騰について言及するにとどまりましたが、本稿ではこれまでの弊社の採用支援実績を踏まえ、そこから見えてきた新たな傾向についてお伝えします。

以下、求人の主体により
(1)機関投資家、運用会社など「投資する側」の求人
(2)投資対象となる企業の求人
(3)ESG関連のコンサルティングを行う企業(又は部門)
の3部門に分類して、それぞれの特徴を述べることとします。

(1)機関投資家、運用会社など「投資する側」の求人

前回のレポートと同様、継続してESG投資業務、ESGアナリスト業務、議決権行使業務の求人がございます。昨今は日本市場におけるESG投資の拡大を見据えた外資系運用会社数社の日本拠点でのESGチーム立ち上げに伴う募集もありました。新しい分野故、経験者の少ないESG関連職においては、異業界からの採用も目立っており、通常は業界経験者の採用が中心の運用会社が、コンサルティング会社からESGの専門家を積極的に採用しています。弊社を通じて監査法人系コンサルティング会社から外資系運用会社へ転身された方は「企業との関わり方において、運用会社の立場の方がより企業収益に直結するため、醍醐味を感じる」と仰っていました。

(2)投資対象となる企業の求人

富士フイルムホールディングスは2019年6月、これまで経営企画部内に置いていたCSR部門を発展的に改組し、社長直下の組織として「ESG推進部」を新設しました。ユニ・チャームも2020年1月付で「ESG本部」を新設しました。これらはほんの一例で、上場企業各社がESGの取組強化による企業価値向上を図っています。事業会社のみならず、金融機関でも同様にESGに関する所轄部署を変更する等の動きがあり、昨年は弊社でも「経営企画部ESG担当」「サスティナビリティ推進担当」などESG関連職の採用のお手伝いを多数させて頂きました。そんな中でもとりわけ募集が多かったのは「IR担当者」です。大手生命保険会社、大手損害保険会社、金融持株会社、ネット系金融会社など多くの会社から求人をお預かりしました。PRIは投資対象の企業に対してESG課題についての適切な開示を求めており、機関投資家に促される形で投資先企業の意識や行動が変わりつつあることが背景にあります。また政策保有株式の縮小の動きや、物言う株主、アクティビストの台頭に伴い、ステークホルダーの関心をふまえた対話がますます重要となっており、IRの業務範囲の拡がりや業務難度が上がっていることも背景にあると思われます。

(3)ESG関連のコンサルティングを行う企業(又は部門)

特に信託銀行におけるESGを含めたコーポレートガバナンスに関するコンサルティング職の求人ニーズが旺盛です。内外の機関投資家の考えや求めていることを日本の発行体に伝え、長期機関投資家とのエンゲージメント戦略構築、サスティナビリティ・ESG戦略体制の構築の支援をしたり、ESG評価機関対応、統合報告書の製作を支援する業務となります。弊社がご転職の支援をさせていただいたESG専門コンサルタントの方は「ESGの専門性をフックにコーポレートガバナンス全般のコンサルティングができることが魅力。日本にコーポレートガバナンスを根付かせたい」と仰っていました。こうしたコンサルティングのニーズは今後も高まっていくかと思います。

 弊社も人材紹介会社の立場から、ESG関連の人材のご入社支援を通じて、微力ながら社会課題の解決に貢献して参りたいと思います。本年もどうぞ宜しくお願い致します。

専任コンサルタント 土井徹

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