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逆張りの勝負を狙う、航空機ファイナンス

 「2020年は業界史上、最悪の年」との言葉通り、コロナ禍による航空需要の激減は航空業界に大打撃をもたらしました。一機当たり50~150憶円かかる航空機の全てを航空会社の元手資金で調達することは最早、現実的ではありません。かつて経験したことのない方向転換が求められる中、「ピンチの今こそ、チャンス」といわんばかりの逆張り投資へと舵切をする向きも実は少なくありません。

 「これからはオペレーションリースの時代が来る」と三井住友フィナンシャルグループ傘下のSMBCアビエーションキャピタルが25億ドル(約2700億円)を投じて航空機を取得したニュースは未だ記憶に新しいことと思います。
 オペレーションリースへシフトする背景には大量の機材を保有し続ける資金的余力がなくなってきたという側面ばかりではありません。機材調達の自由度により新たな成長戦略の鍵として重宝されてきた面もあるのです。実際、LCCや新規参入エアラインの急速な事業展開は航空機ファイナンス市場の拡大に支えられて可能になりました。

 ボーイング社によると、同社の航空機群の納入を支える資金調達は第三者によって賄われています。セール&リースバックの取引が活発に行われることで、業界内におけるリース機のフリート割合が46%上昇しました。資本市場から航空機業界向けファイナンスに流入した資金規模はコロナ禍以前の2019年と比べ、70%増加したと報じています。
 航空機ファイナンスの手法は航空会社の信用度に拠って自ら融資を受け、航空機を調達するコーポレートファイナンスと航空機自体の資産性を重視するオペレーティングリースの手法に大別されます。後者は我が国においては購入選択付日本型オペレーティングが含まれるため税制のメリットを得られるとして、もともと人気の高い投資商品でした。世界的にも航空機ファイナンスへの潤沢な資金流入が予測され、機体の価値も右肩上がりの様相を呈していました。カーライル・アビエーション・パートナーズの関連会社がグローバルな航空機リース会社のフライ・リーシング・リミテッドを約5憶2000万ドルで買収した件もその一例でしょう。
 とりわけ、パンデミック後は機関投資家や投資ファンドが積極的に航空機ファイナンスに関与する動きが目立ってきました。航空会社とのセール&リースバック取引において航空機価格が底値であるタイミングで取得しておけば航空需要が戻った際に多額のリターンが期待できる魅力的な投資対象となり得るからです。この「キャッシュ・カウ」としての妙味に巨額の資金を投じる海外投資家やプライベートエクイティファンド、オルタナティブファンドも少なくありません。

 コロナ以前の水準に戻るまで、先行きは不透明ではあるものの、ワクチン普及を追い風に近距離需要が戻りつつある今、ポスト・コロナを見据えた制空権掌握へ向け、航空機ファイナンス市場が活発化しているのは確かです。
 こうした新規プレイヤーの参入の影響を受け、航空機ファイナンス求人のニーズも変化がみられるようになりました。特徴的なのは株主として成長戦略を考慮した経営企画や経営管理など関連ポジションのニーズが生じていることです。
 銀行、信託銀行、総合商社、航空機リース会社において航空機ファイナンスの経験をお持ちの方であれば、単に融資担当者としてだけでなく、投融資先の経営管理、事業戦略に携わるという求人ニーズも出現致しました。転職相談にお見えになった方からは「業務内容の広がりを再認識できた」「自分のキャリアパスを見通す、よい機会になった」という声が寄せられています。コロナ終息の見通しがまだまだ見えない状況下ですが、ここは「逆張り」で、ご自身の足元を見直す機会と捉え、今後のキャリアパスを検討してみてはいかがでしょうか。ご興味を持たれた方はぜひ、ご連絡ください。

 専任コンサルタント 朝田恒平

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