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銀行のITエンジニア採用成功例から学ぶ、メッセージングの重要性

 銀行業界においてはメガバンクから地方銀行まで、店舗の縮小を進める一方で、各社競ってデジタル化を急速に進め、次世代へのサービス開発を急いでいます。異業種との提携による新銀行設立や、更には異業種からの参入も見られます。こうした中で近年、IT人材の採用ニーズは高騰しておりますが、デジタル化の波は銀行に限ったことではなく、ITエンジニア採用は異業種も含めた熾烈な競争となっていて、多くの銀行において優秀な人材の獲得が、大きな課題となっています。
 ところがこのような状況下においても、数十人規模のエンジニア採用に成功している銀行もあります。多くの銀行が苦戦している一方で、順調な銀行もある、この二極化は、どこから生じているのでしょうか。考察から見えてきたのは「候補者に企業からの熱意あるメッセージをしっかりと届けることの重要性」でした。以下、2社の事例から見てみましょう。

【A社】地方銀行の子会社として設立されたスマホ専用銀行
2019年に準備会社を設立後、2021年5月に開業し、今では170名越えの組織へと成長。採用担当者がわずか1名であるにもかかわらず、1年間で50名以上の採用に成功しています。特筆すべきは、中途採用者のうち、約60%がITエンジニアであること。スマホ銀行における決済のしやすさ、画面の見やすさ、操作の心地よさ、ページ遷移におけるストレスのなさなどを設計開発するUI/UXデザイナーを現在12名獲得しています。メガバンクでも4~5名が通例と言われる中、こうしたエンジニアの採用に力を入れているのは徹底的にUII/UXの開発に尽力を注いでいる経営戦略の現れといえるでしょう。

【B社】大手モバイルメッセンジャーアプリ会社とメガバンクによる共同出資会社
現在、設立準備会社として急ピッチでサービス開発が進められているB社。日本国内では人口の約7割が利用するメッセンジャーアプリ(生活インフラ)を活用し、特にZ世代を中心に幅広い世代に支持されるスマホベースの新銀行設立に向け、採用活動を行っています。B社は過去一年で数十名のエンジニアの採用に成功。現在も、サービス企画/業務企画/市場業務/エンジニア/金融犯罪対策/情報セキュリティ(個人情報保護)など幅広い職種の募集がございます。

A社B社はいかにしてエンジニアの採用に成功しているのか? 私は、実際に転職されたエンジニアや人事担当者にお話を伺いました。すると、
職場としての魅力として 
・「大企業をバックボーンとする安定性」と「新しいビジネスに参画できること」の両立、
・勤務地選択の柔軟性、
を備えたうえで
・候補者に「あなたに来てほしい」「当社ならこんな世界観が創れるので、是非一緒やろう」にというメッセージを謙虚に、熱意をもって伝えていること
というポイントが見えてまいりました。

(1)「大企業をバックボーンとする安定性」と「新しいビジネスに参画できること」の両立
 エンジニアにとって、新規事業立ち上げのタイミングで組織に在籍できることは、誰もが経験できるわけではない貴重な機会であり、魅力に感じる方が多いようです。また、「新規事業」しかも「金融機関設立」という希少性の高い経験は自らのキャリア形成の面からも魅力的です。そこにこうした魅力的な仕事の機会を、未知の新興ベンチャー企業ではなく、大企業の安定したバックボーンの下で得られるという安心感が加わって、躊躇せず転職できるのです。

(2)勤務地選択の柔軟性
 勤務地が選択可能であることは、ITエンジニアにとっては大きなベネフィットと言えます。コロナ禍下でリモートワークが定着する以前から、勤務地の柔軟性を重視するエンジニアは多数いらっしゃいましたが、最近ではその傾向がさらに強くなっています。首都圏・地方にかかわらず、「子育てがしやすい」「物価が安い」「縁がある場所で働きたい」など、自分の居心地のいい場所で仕事ができることにメリットを感じる方が多いこともITエンジニアの特徴と言えましょう。我々人材エージェントが転職希望のお客様と面談する際にも「リモートワークが可能かどうか」という質問が多数聞かれ、最近さらに増えている実感があります。先に紹介したA社では、本拠地(地方)のみならず東京でも勤務可能、B社でも、繁忙期や有事を除き、場所を問わない勤務が可能となっているのが特徴です。実際、社員の居住地は首都圏のほか、各地に分散しているそうです。

(3)候補者に「あなたに来てほしい」「当社ならこんな世界観が創れるので、是非一緒やろう」にというメッセージを謙虚に、熱意をもって伝えること
 A社は準備期間中から自社独自のメディアプラットフォームを立ち上げ、新しい銀行設立に対する想いや経営のビジョン、ミッション、バリューなどを経営陣や社員自らが発信し、これを求人票とあわせて採用候補者にも公開しました。会社の価値観や働く人の思いがしっかり伝わり、熱量も届いて、これをきっかけに応募する人が多数いらっしゃったそうです。
 B社の採用プロセスでユニークなところは、入社後お互いのイメージの食い違いを避けるため、最終面談に臨む前に現場スタッフや配属予定先の部門長のみならず、部門を統括する役員と、面接とは異なる(ジャッジを伴わない)「カジュアル面談」の機会を設けていることです。目的はカルチャーを伝えるとともに、入社後の働き方や期待を具体的にイメージしてもらうこと。このことは求職者の企業理解を促進し安心感や信頼感、親近感の醸成に無理なくつながっているようです。まだ応募に踏み切れない候補者に対しても、「カジュアル面談」の機会を惜しみなく設定して、採用の背景や会社の目指す方向性のほか風土や文化を理解してもらうことを通じて、求人票だけでは伝わらない会社のリアルを伝えることにエネルギーを注いでいます。
 A社とB社、両社の採用活動は共に、安定性や勤務地の柔軟性など労働環境の魅力だけではなく、カルチャーや職場環境など転職者の不安を払拭する情報、更には「あなたに是非入社してもらいたい」という熱意を、求人票や面接以外の場で一生懸命に伝えたことによって成功していると言えます。

 ここまで、二つの銀行におけるITエンジニア採用成功事例から考察してまいりましたが、企業が、ITエンジニアに限らず優秀な希少人材の獲得競争に成功するためには、「応募要件が書かれた求人票」と「選考を目的とした面接」の旧来型採用から脱却して、謙虚な姿勢で熱意をもって誠実に候補者にアプローチすること、そして選んでもらうことが必要なのだと思います。
 アートディレクターの佐藤可士和氏は、自らの仕事を次のように語っていらっしゃいます。
「売れないのは、消費者とのコミュニケーションがうまくいってないから。ほとんどの問題は、コミュニケーション障害だと言っても過言じゃない。僕にできるのは、デザインの力を使ってそれらを修復すること」(2022年4月2日 朝日新聞より抜粋)
「良いモノを作れば売れる時代は終わった。届け方を考えなければならない」(https://www.asahi.com/and/article/20180629/154059/ より抜粋)
 採用活動においても同じように言えるのではないでしょうか。
「採用できないのは、候補者とのコミュニケーションがうまくいっていないから。」
「良いポジション(社格や条件面)を提示すれば、採用できる時代は終わった。なぜあなたを採用したいのか、当社であればこんな活躍が出来る、というメッセージを伝えなければならない。」と。 
 私は常々、我々人材エージェントが候補者様にお送りするスカウトメールや求人票は、候補者様への「ラブレター」でなければならないと思っております。我々エージェントはそのラブレターを作成する作家でありますが、一流の作家になるべく、日々企業様へのヒアリングを丁寧に行っております。一方でお問い合わせいただいた候補者様からはお話をじっくり伺い、各々の価値観や転職活動の観点を理解して、応募に踏み切れない懸念などがあれば企業様への確認や相談を行って、双方が納得いただけるマッチングを心がけています。
 私たちKANAEアソシエイツは、素晴らしい出会いのために、一生懸命に企業様のメッセージを候補者に伝えます。是非一度、弊社にご相談いただけますと幸いです。

コンサルタント 佐藤史織

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