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2018年金融人材市場の総括と、2019年の展望

 2018年、金融人材マーケットは、メガバンクの人員整理の行方を注視することからスタートしました。銀行は採用を大幅に縮小。転職市場には銀行員が溢れるのではないかといった不安な声も聞かれました。しかし、そうした予想は杞憂に終わったようです。変化に対応するために金融業界の内外から多数のスペシャリストが迎え入れられたほか、とりわけFintechに関する求人は旺盛で、多くの金融人材の受け皿となり沢山の優秀な人材が転職を果たしました。

 本稿では昨年の金融人材マーケットを振り返り、更に本年2019年を展望したいと思います。まずは業界別に見て参りましょう。

2018年金融人材マーケットの振返り

 銀行においては特にエクイティ・キャピタル・マーケット、デッド・キャピタル・マーケット、M&Aアドバイザリーおよび信託銀行のファイナンシャルアドバイザリーなど、とりわけIPOを視野に入れたプロダクトバンカーの求人が堅調でした。年金運用ビジネスや富裕層向けの遺言信託のコンサルティング業務経験者、事業承継コンサルティングのプロフェッショナル採用ニーズも旺盛でありました。

 証券業界ではフィデューシャリー・デューティーが強化されて以後、証券会社の多くが投資信託の販売手数料に依存した収益体質からの脱却を迫られました。そんな中、特に目立ったのが、一握りの富裕層から一般大衆に裾野を拡大する動きです。「国民全体の金融リテラシーを向上させる」という金融庁お墨付きの命題がこの動きを後押ししている向きもあります。そこで人材面では「会員制マーケットの醸成を目的としたBtoCマーケティングの経験者」や「ネット系人材」に需要が集まりました。

 資産運用業界の昨年の求人ニーズを特徴づけたのは、「グループ会社の機動力を集結し、銀行・信託・証券・資産運用という業態を超えてサービスを提供する」、アセットマネジメントOne社の台頭かもしれません。強大なライバルの出現に、資産運用各社は変容を迫られました。大規模化やオルタナティブ投資への舵切などの方針が打ち出され、外部委託運用やオルタティブ運用、ファンズ・オブ・ファンズをはじめとするヘッジファンド、プライベートエクイティ、プライベート・デッド・エクイティにおけるインフラ投資の案件やプロダクトマネジャーの求人ニーズがよく聞かれました。

 保険業界では「デジタルトランスフォーメーション」を合言葉に、大きなシフトチェンジが図られました。デジタルテクノロジーを駆使したビックデータ解析をはじめ、サイバーセキュリティやウエアラブルデバイスの技術進歩によって次々に新たなビジネスモデルが誕生しています。人材面ではこうしたデジタル変革を推進できるデジタルマーケティング領域の求人が目立ちました。また、保険業界では「健康」「セルフケア」といったキーワードに象徴される領域への移行が顕著で、採用においてはこれまで保険業界とは馴染のなかった異業界の経験者、例えば消費財メーカーのマーケティング経験者などに対し、門戸を開く動きが加速しました。

 目まぐるしく変化する世の中への対応の為に、様々な「新しい要請」が殺到した監査法人の採用もまた昨年は特徴的でした。とりわけ国際社会におけるテロや金融のグローバル化に伴う犯罪、地政学的リスクを背景としたAML/CFT、FinTechの動きに伴うリスク対策、或いは“Tech”を用いた規制対応のRegTechなどの分野での求人が急増しました。

2019年の展望

 三菱UFJ信託銀行が顧客の個人情報データを預かって民間企業へ提供する「情報銀行」に乗り出したことは2019年の業界動向を考える上で、見逃せません。個人情報を「資産」と見做し、「信託ビジネス」を新たなデジタルサービスとして創出する。そのビジネスモデルの構築に期待が高まる中、法務知識に精通したプロジェクトリーダーの獲得が急務となっています。今年は「個人データ銀行」の動向に注目が集まることは間違いないでしょう。

 年金運用ビジネスや富裕層向けの遺言信託のコンサルティング業務経験者の採用ニーズも、衰えることはなさそうです。富裕層向けに提供するサービスプロダクトを強化に向け、税理士、会計士、不動産鑑定士をはじめ専門的知見を有した事業承継のプロフェッショナルが求められるでしょう。

 ベンチャーキャピタルの求人ニーズも相変わらず、活況となるでしょう。特に技術領域でデューデリジェンスのできる人材や、投資先の資金調達戦略を推進できるCFO人材は、各社とも採用面で苦戦が続いていて、求人ニーズがさらに強まるものと思われます。

 監査法人においてはアンチマネーロンダリングおよび暗号資産をはじめとするリスク管理人材の争奪戦も予想されます。監査法人、暗号資産業界、メガバンクのいずれもリスク管理に精通した人材の確保は喫緊の課題となっていますが、対象となる30~40代の人材確保は容易ではありません。それは単に、構造の問題に拠るものです。サブプライム以降に発生した人材の需給バランスの悪さはいまなお金融業界全体に影を落としています。このような金融業界における人材の需給バランスの悪さを補完するかのように、監査法人への依存傾向がますます高まっています。金融インダストリー人材のニーズ高騰はしばらく続きそうです。

 上記の様に本年も金融業界では業態を問わず、活発な採用競争が展開されることが予想されますが、特に20代を中心とした若手については、売り手市場が続くでしょう。1人の求職者に対して複数社からオファーが殺到することも珍しくなく、給与面でも好条件が提示されています。特に急成長しているフィンテックや暗号資産業界(仮想通貨業界)の中には、伝統的な銀行、証券の総合職の給料をはるかにしのぐ高い水準で報酬を提示する企業は少なくありません。更に、若者のインセンティブになりうるオフィス環境、ライフ・ワーク・バランス、働き方の自由度の売込みなど、各社躍起になっています。

 以上、昨年の金融人材マーケットを振り返り、今後を展望して参りました。弊社では今年、創業10期を迎えます。人員も1月に2名増員し、お客様からのご期待にこれまで以上にお応え出来るよう、社員一同精進して参る所存です。引き続きましてご指導ご鞭撻を賜りますよう、どうかよろしくお願い申し上げます。

KANAEアソシエイツ株式会社 代表取締役  阪部哲也

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