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PEファンドの求人状況と持ち合い株解消に伴う今後の動向について

<1> PEファンドの求人状況

 PEファンド49社に投資フロントの採用計画数についてヒアリングを実施したところ、 求人動向に明らかな変化がみられました。前年度(2018年4月~2019年3月)と今年度(2019年4月)の採用計画数を比較すると、35パーセント減少(2018年度131人→2019年度86人)しています。ヒアリングをしたPEファンドを①政府系、②金融系、③独立系、④商社系、⑤外資系の5つに分類すると、政府系は34パーセント減少、金融系においては64パーセント減少しています。

 政府系・金融系ファンドは2018年度に積極的に採用を行ったこともあり、いずれも採用控えの傾向に加え、政府系ファンドは投資の縮小・撤退を検討している動きが出てきています。それに伴い採用計画も縮小せざるを得なかったこと、また、金融系ファンドにおいては2018年中に採用が充足し、2019年度の採用計画数が少なかったことが理由として挙げられます。独立系、商社系、外資系の採用計画数はほぼ横ばいです。独立系ファンドに関しては昨年の採用計画数は多く、かつ実際に採用したケースも多数ありました。新ファンド設立を検討しているケースも複数社でみられ、ジュニアクラスの引き合いは堅調です。一部のファンドではディレクタークラスの採用も行っています。独立系ファンドの採用意欲は本年度も引き続き高い印象があります。

~PEファンド49社の採用計画数~(2018年度→2019年度 当社調べ)
 ・全体  131人→86人 35パーセント減少
 ・政府系 34パーセント減少
 ・金融系 64パーセント減少
 ・独立系 横ばい
 ・商社系 横ばい
 ・外資系 横ばい

<2>持ち合い株解消に伴う今後の動向について

 2020年以降のファンド業界の動向で無視できないのは、持ち合い株制度の解消に伴う市場の変化とアクティビストの台頭です。

 2019年5月の株式市場でマザーズに上場している創薬ベンチャーのそーせいグループの株価が大幅に反発しました。この要因として米運用会社のタイヨウ・ファンド・アセットマネジメントが保有比率を引き上げたことが挙げられます。アクティビストが狙いを定めた事実から、そーせいの企業価値はさらなる向上が見込めると市場の期待が高まりました。また、同月にアパートの施行不良問題に揺れるレオパレス21の大株主に旧村上ファンド系のファンドであるレノが浮上。さらに中堅ゼネコンの淺沼組は2020年3月期の配当を対前年比55%増の208円とすることを発表しました。こちらも旧村上ファンド出身の丸木代表が率いるストラジックキャピタルが大株主です。また、直近では米国アクティビスト・ファンドとして著名なトライアン・パートナーズが日本企業への投資を検討し始めたと報じられています。ネットキャッシュ倍率や株価純資産倍率(PBR)が低く、企業価値に割安感があること、また、資本効率性の低い日本企業を投資の好機とみる海外のアクティビスト・ファンドは少なくありません。

 ところで、アクティビスト・ファンドは概ね、企業のM&A、経営破綻、事業再編などのイベントを利用して収益を得るイベント・ドリブン型と経営の体質改善やガバナンス改革を目的とした対話によるアプローチを行うソフト/フレンドリー・アクティビストの2種類に分類されます。イベント・ドリブン型のアクティビストは「物言う株主」と称され、これまでは敵対的、強面などマイナスイメージで語られることが多かったようですが、スチュワードシップ・コードの強化の影響もあり、アクティビストはコーポレートガバナンスの急先鋒としてその存在感を大きく示しつつあります。一方、投資先の企業価値向上の為に対話を重ね、エンゲージメント活動を得意とするソフト/フレンドリー・アクティビストは、以前から少なくありませんでした。持ち合い株制度の解消により機関投資家と事業会社がより積極的に対話を行う潮流になれば、戦略コンサルとしての側面をもつ、こうしたアクティビストが今後ますます求められるようになるでしょう。

 さて、転職希望者はイベント・ドリブン型とソフト/フレンドリー・アクティビスト、どちらのタイプを選ぶのでしょうか。それは候補者自身のご志向により様々ですが、いずれにしても投資先企業の役員・社外取締役としての企業価値向上、ガバナンス体制改善の経験を持つPEファンド出身者はアクティビストとして大いに能力を生かせると考えています。PEファンド出身者にとっては、これまでの金融の知見と経営の知見を生かし、より上流のアドバイザーとしてコーポレートガバナンスに一石を投じ、資本市場でプレゼンスを示すことができる十分魅力的なステージだと言えるでしょう。

 専任コンサルタント 芳山和也

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