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新型コロナ感染拡大下における採用動向の変化

 3月25日と30日の両日、小池百合子都知事が緊急記者会見を開き、新型コロナウィルスの爆発的な感染拡大を防ぐため自粛要請を呼びかけました。先行き不透明な時世を反映するかのように株価や原油価格の下落など連日ネガティブなニュースが続いています。リモートワークの導入により在宅勤務を命じられた方も少なくないことでしょう。本稿ではこうした動向の影響を受け、金融業界の転職市場や採用動向がどのように変化したかをお伝えして参ります。

 一部の報道では雇い控え、内定取り消しという言葉も出ております。確かに、コロナの感染拡大による影響を懸念し、2月末に選考の最終局面に入っていた採用を、3月初旬に一旦停止とする決断をした欧米の外資系企業のケースもありました。とはいえ、現状、日系企業の中途採用計画の下方修正は行われず、求人数においても大幅減少には至ってはおりません。

 100年に1度の金融危機といわれた2008年のリーマンショック時の金融の転職市場や採用動向はどうだったと思われますか? あまり知られていないことですが、リストラの嵐が吹き荒れる只中にあっても、2008年のリーマンショック直後の大手人材紹介会社の金融専門職領域における高年収帯の決定実績は、前年度対比で10~15%程度の減少で留まっていました。当時の新聞報道を覚えておられる方からすると、5割以上の減少になっても全くおかしくないような印象だったと思います。当時、雇い控えが見られ、軒並み採用ストップになったのは、主としてポテンシャルが期待される若手のポジションだったのであって、専門的スキルを持った方々の採用の方は比較的堅調だったのです。景気減退の局面に入った時であっても、状況を打開できるような組織改革や新規事業等の対応策を打ち立てられるエグゼクティブの採用ニーズが急ぎ出てくることはよくあります。必ずしも非常事態が一概に採用数の大幅な減少には結びつかないのです。

 在宅勤務がもたらした変化も少なからずあるようです。コロナ禍の影響が出始めた時期が4月の人事異動の内示のタイミングと重なったこともあり、電話による転職相談は実際に増えています。リモートワークの在宅勤務となり、「自身のキャリアやこれからの働き方について初めてじっくり考える機会を持てた」という方や「平常時と異なる環境下で、内省の機会を得て、転職を考え始めた」という、日頃多忙な方からの電話相談のお問い合わせも実際にあります。申し上げにくいことではありますが、通常時よりも、大幅に多くのご連絡を頂いているのが実情です。

 採用が止まっているとも言えません。企業の皆様の採用に関する対応は二極化し、採用を見送る企業がある一方で、マスク着用での対面面接は控え、ZoomやSkypeなどを使ってでも、候補者としっかりとコミュニケーションを図り、採用を続けている会社が多数あることは見逃せません。現在選考が進んでいる求職者が、数ヶ月後に内定を受け、在宅勤務解除後に現在の勤務先を退職される方が多数でるかもしれません。
企業によっては、特に2020年6月頃のボーナス支給後、例年以上に退職者が出る可能性はあるでしょう。

 イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、新型コロナ危機後、「私たちはこれまでとは違う世界に暮らすことになる」と述べています(出典:日経電子版2020年3月30日)。コロナの嵐が去った後、これまで最適化されてきたビジネスモデル、技術、働き方等多くの概念は大きく変容しているかもしれません。それに伴って求められる人材も変わってきそうです。

 連日ネガティブなニュースが続いていますが、困難な状況からの一日も早い回復を願うばかりです。

 専任コンサルタント 谷地田まな海

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