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大手銀行、大手信託銀行の採用動向と手法の変化

 「3メガバンク、中途採用22年度8割増 新卒偏重から転換」という見出しの記事が今年5月6日の日経新聞に掲載されました。3メガバンクの22年度の中途採用計画が約360人で対前年の8割増にのぼる見通しであること、これまでの新卒一括採用で様々な部署を経験させながら育てる手法から即戦力の専門人材を中途で採用する比重を増やす方向に変わりつつあることが報じられました。 
 実際、メガバンク3行をはじめとした大手銀行、大手信託銀行の採用は非常に活発です。弊社が大手邦銀の中途採用ニーズについて「①確保したい最低人数 ②可能な限り採用したい人数」を調査したところ、昨年採用実績人数に対し①は約1.5倍、②は約2,3倍という結果となりました。アグレッシブな採用目標でありますが、今期3ヵ月(4~6月)を経過した現在の採用実績を調査したところ、日程消化率(3ヶ月/12ヶ月→25%)と比較し、いずれの銀行も目標採用人数に対し遜色ない程度の採用状況であり、順調な滑り出しということができると思います。
 今回は、大手邦銀の現状の採用動向や採用手法等の変化について、直近1~2年の弊社での転職ご支援実績を紹介しつつ、レポート致します。

銀行における投資業務

 2021年5月に成立した改正銀行法により、銀行の事業会社への出資規制(いわゆる5%ルール)が緩和されたことが採用動向に影響を与えました。邦銀による投資ファンドへの積極的な投資が進んだだけでなく、たとえば、SMBCキャピタル・パートナーズ、りそな企業投資、ひろぎんキャピタルパートナーズなどのように銀行による投資ファンドの設立が進みました。信託銀行の年金運用におけるPE投資の求人は以前からもありましたが、自己勘定によるPE投資や、銀行が設立したGP側の採用はここ1~2年に発生した新しい求人ニーズといえます。
 弊社からのご紹介で独立系PEファンドから大手邦銀系PEファンドへ転職された方によれば、「銀行系PEは銀行本体との連携によりより多くの案件に従事できること」「投資活動、バリューアップ、EXITに集中できること」が魅力とのことでした。現在、PEファンドにご在籍中の方でファンドレイズやソーシングで時間をとられることよりも多くのトラックコードを積みたいというご希望をお持ちの方にとって大手邦銀系PEファンドは新たな活躍の場といえるでしょう。

人事部門でも加速する中途採用

 伝統的な邦銀における人事部門と言えば、新卒純血主義で新卒入社した社員がご活躍されているイメージを持たれる方も少なくありませんが、ここ1~2年で人事部門も外部へ広く門戸を開くようになりました。とりわけ、人事データ分析、健康経営、ハラスメント等のトラブル対応を含む労務、40代行員向けのキャリアコンサルタントなど、高い専門性を要求される業務においては社内で人材を確保することが難しく、外部プロフェッショナル人材の募集を強化しているのが現状です。最近では「IT人材の育成」というユニークな募集も大手邦銀で散見されるようになっております。 
 弊社が大手邦銀の人事部門への転職をご支援した方の多くが、金融以外の業界ご出身の方となっております。転職動機をお尋ねすると、「銀行という無形商材において人材こそが事業経営において重要であり、そこで人事業務を行うことが、やりがいにつながる上、自身のキャリア形成において役立つと思った」と仰っておりました。異なる業界にいたからこそ感じられる魅力があるようです。人事部門でのご経験をさらに活かしたいとお考えの方にとっては銀行という選択肢も新たなチャンスとなるはずです。

40代の採用

 40代の方にとって銀行への転職はキャリアの連続性や報酬面を鑑みると積極的になりづらい面が否めなかったように思います。従来のメガバンクでは、51~52歳で出向、55歳で役職定年、60歳で定年と、40代の方にとってそう遠くない未来を想定しなければならなかったからです。
 採用する銀行側にとっても候補者が40代ともなると活躍できる期間が短いこともあり、同様に臆する傾向にありましたが、ここ最近、若干変化の兆しがみられます。適用事例は決して多くはありませんが、銀行側が従前の正社員総合職だけでなく、年収など調整がしやすい有期雇用制度にてプロ人材を高待遇で迎え入れるケースも出てきております。40代の候補者のうち、会社に依存せずともキャリア形成ができ、かつ自信をお持ちの方にとってみても、無期雇用よりもむしろ高待遇の有期雇用を望ましく思われる方も少なくありません。2年前になりますが、私が某銀行への転職を支援した40代後半の方がとても印象的だったことを思い出します。最先端テクノロジーの専門人材で、出版されたり、IT系メディアに寄稿されたり、ご人脈も豊富な方でいらっしゃいました。銀行は未経験分野でしたが、ITリスク管理部門の立ち上げフェーズを経験できる面白さに魅力を感じられ、まるでひとつのプロジェクトに参加されるような感覚で有期雇用を積極的に希望され、ご入社されました。
 この2年間を振り返りますと、弊社における大手邦銀へのご入社支援のうち32.9%が40歳以上となっております。ご参考までにご採用ポジションを抜粋しますと、
投資顧問ビジネス/年金受託財産のオルタナティブ投資/ファンドアナリスト/事業投資(GP側)/ESGコンサル/IR・SRコンサル/プロジェクトファイナンス/相続ビジネス/新規事業開発/AML/サイバーセキュリティ監査/人事(労務担当)、などとなっております。

給与アップや定年延長による優秀人材の獲得と定着

 
 上述の有期雇用での高待遇とは別で、プロ人材向けの高待遇の「正社員」制度を用意する邦銀もございます。昨年3月30日の日経新聞の「三菱UFJ銀行、新卒年収1000万円も デジタル人材を確保」の記事で紹介された事例もそれにあたります。熾烈な人材獲得戦においては優秀な人材を「外部」から獲得するだけでなく、「内部」の優秀な人材の流出を防ぎ、いかに定着させるかということも重要な命題です。その意味で今期に入り、大手銀行が横並びで「人への投資」強化をしている動きは見逃せません。2022年4月20日の日経新聞の記事によれば、三菱UFJ銀行は従業員の賃金と賞与を合わせた「総支払額」を前年度より1%上げることで労使が妥結しました。昇格や登用に伴う賃上げ分を考慮すると、実質的に平均3.5%を超える上げ幅になるそうです。また2022年5月11日の同紙の記事によれば、三井住友信託は今年度の賃金について、ベースアップ含め平均で4.5%程度の賃上げを実施する方向で労働組合と最終調整中で、ベアは7年ぶりであると報じました。
 賃金アップだけでなく、定年の延長も共通した傾向です。定年延長によって優秀な社員の意欲向上と社員の定着を図り、労働力を確保することが狙いです。たとえば、三井住友銀行は2020年より、三井住友信託銀行は2021年より定年を60歳から65歳に延長し、経験と知識のあるシニア層を確保・活用する動きが広がっています。
先述した40代の候補者にとって、65歳定年の会社は魅力として映るようです。

多様化する採用チャネルと採用手法

 採用チャネルの多様化も特筆すべき点です。人材エージェント、求人広告、自社HP、リファーラルに加え、いわゆる「出戻り採用」が増えてきていることが非常に特徴的です。転職、起業、キャリアアップのための学業復帰、育児、介護、配偶者の転勤などのやむを得ない事情で退職した人などを対象としているものです。三井住友銀行では「カムバック採用」、みずほフィナンシャルグループでは「カムバックアルムナイ採用」と銘打ち、専用エントリーページを設けています。
ちなみに某銀行では昨年度中途採用で全体60名のうち、約20名が元社員という結果でした。社内文化や風土に馴染みのある社員を再雇用することで人材育成の時間を短縮できることは採用側にとっても大きなベネフィットであり、この動きはしばらく続きそうです。

まとめ

  
 大手邦銀の直近1~2年の採用動向を抜粋し紹介致しましたが、従前の募集ポジションも含め、大手邦銀の求人ニーズはいまなお増加傾向にあります。銀行に転職するにはまたとないチャンスといえるでしょう。変革期の巨大なプロジェクトに関与できる機会に溢れていると言い換えてもいいかもしれません。弊社では各社、各職種にわたる豊富な決定実績がございますので、選考プロセスに応じた効果的なアドバイスができるかと思います。銀行へのご転職をご検討の方はぜひご相談ください。

 KANAEアソシエイツ 土井徹

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