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リスキリング興隆に伴う、DX人材育成ポジションの大幅増加

 先日行われた臨時国会で、岸田文雄首相が「リスキリング」の支援に5年で1兆円を投じると発言したことが、話題になりました。構造的な賃上げの実現に向けて、デジタルやグリーンなどの成長分野への労働移動を促すため、個人のリスキリングの支援に乗り出したようです。

 「リスキリング」は、半ばバズワード化した言葉で様々な捉え方があるようですが、リクルートワークス研究所によると、リスキリングの定義は、従来の社内外の研修や学び直しではなく、「DX時代の人材戦略」として、デジタル技術の力を使いながら価値を創造できるように多くの従業員の能力やスキルが再開発される状態を指すようです。

 海外では、世界的なデジタルジャイアンツ企業であるAmazonが2025年までに7億ドルを投じて米Amazonの従業員10万人をリスキリングすると報じられたのが2019年のことでした。単に高度なスキルを持つスぺシャリスト人材のみならず、非技術系の従業員を技術職へ移行させるためのテクニカルアカデミーの設立や機械学習スキルの獲得を目指すための学びの機会を創出することで従業員のデジタルスキルを全体的に底上げしていく取り組みが注目されました。
 国内では、キヤノンが事務機器の工場で働く従業員など1500人に対して、クラウドやAIの研修を半年ほど行うようです。主力部門だった事務機器やデジカメの市場が縮小しており、医療機器など成長部門へ人材のシフトを後押しし、プリンター開発をしていた社員が医療機器部門に移り、ソフトウエア開発を担当している事例も既にあるようです。
 また、三井住友フィナンシャルグループは、銀行などの従業員5万人にデジタルツールの活用法や、取引先の業務のデジタル化(DX)を支援する方法を学んでもらっているようです。スマホ決済・送金やクラウドファンディングの登場で、銀行は店舗を拠点にした対面サービスの見直しを迫られており、これまでのノウハウだけでは競争力を保てなくなっているからです。

 上記の動きに伴い、中途採用市場においても、変化の兆しが出てきています。

 データサイエンティスト等のAI技術者、デジタルマーケティング、UXデザイナーなどの人材ニーズは相変わらず旺盛ですが、今年に入り、にわかに急増しているのがデジタル人材やIT人材を育成できる人材育成経験者、社内研修経験者をはじめとする、組織人事経験者への求人です。弊社に寄せられている求人数においても昨年度対比で約4~5倍の増加がみられます。
 従来通り、デジタル人材の中途採用を行いつつも、並行して内部育成へと戦略転換をする企業が相次いでいるからです。そもそもデータサイエンスやAI技術、機械学習など高度なスキルを保有する経験者が労働市場に少ないことに加え、全企業におよぶDX化の波により、人材の獲得競争の熾烈化が内部育成を一層後押ししています。

 このような人材育成ポジションの増加には、採用側の2つの期待が見て取れます。ひとつは、社内でデジタル人材を自前で育成する動きです。リスキリングを実施することで、時代のニーズに合ったスキル獲得を社員が行うことで、適切な人材のアロケーションを行うことです。もうひとつは、会社全体をDXに向けて、デジタル化する為の、風土醸成をする動きへの期待です。アナログな社員全体のデジタル化の底上げが必要だという認識の高まりがその背景にはあるようです。

 こうしたソフト面を含めた問題解決ができる教育研修や組織人事コンサル経験者が歓迎されているというわけです。会社全体の文化を変えながら、これまでの人材をデジタル人材に変えていくことが出来る人事担当が求められており、伝統的な金融機関での意識改革は大変な分、やりがいも大きいはずです。変革期の金融業界でこれまでの人事経験を活かせる、新たな挑戦の場が豊富にあります。チャレンジされたい方、ご興味のある方、是非、我々KANAEアソシエイツまでご相談ください。

コンサルタント 兵藤正憲

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