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「売り手有利の転職市場」は本当か~VC転職を例に見る~

転職求人倍率1.78倍。5月に報じられた転職求人倍率は引き続き高い水準で推移しています。金融業界においては低金利環境・デジタル化の動きも相まってメガバンクの人員削減が計画される中、転職希望者数も増加傾向にあります。空前の売り手市場とも言われ、「未経験可」のポテンシャル求人が目立つため、一見すると転職へのハードルが低くなったように思われるかもしれません。しかし金融専門職に関しては、転職はむしろ難易度が高くなっている印象があります。

その難しさは企業側、候補者側双方ともに共通していることが特徴的です。以下、若手の中途採用が活発化しているベンチャーキャピタル(以下VC)の転職を例に見てみましょう。

大きな変化は採用選考の方法に顕れています。候補者の選考に新たな基準を設ける企業が増えているのです。従来通りの面接による一問一答型の質疑応答に代わり、Webによる適性テストの導入をはじめ、レポーティングやプレゼンテーションの実施などを通じて、データ分析へのアプローチ方法や論理的思考、業界トレンドへの理解力および先見性、起業家マインドの有無を問う傾向が強くなっています。
こうした選考過程の変化は、転職希望者の適性や業界・企業への本気度を判断するためだけでなく、採用基準の高さをも物語ります。単にポテンシャルがあるというだけでは通用しません。言い換えれば、キャピタリスト自身がそれだけ質の高いアウトプットを求められている証であり、成長機会を約束された環境だと捉えることもできるでしょう。

一方で、VCへの転職を希望される若手も少なくありません。その背景には国内のスタートアップ企業への投資の拡大、大企業とベンチャー企業の協業の増加、またネットビジネスの発展やVCの台頭に伴い、企業がIPOするスピードが徐々に上がってきているなどの明るい話題もありますが、興味深いのは採用基準が厳しくなっている分、「挑戦し甲斐がある」と意欲を示す方と、「そこまでの自信・覚悟が今の自分にあるだろうか」と躊躇する方と、候補者の反応がはっきり分かれることです。とりわけ意欲のある方ほど企業に対する選定はシビアです。
なぜならば、起業することを視野に入れる人材、会社を拠り所とせずに生き残る方法を模索する優秀な人材は「自らの成長機会を約束する環境かどうか」「人事主導型の異動や転勤命令に左右されずに業務に専念できるかどうか」を重要視する傾向にあるからです。「将来起業を目指し投資家サイドの目線を身に着けておきたい」「スタートアップ企業の事業支援に関わりたい」。そんな明確な動機を持つ人材ほど、単に高い報酬を約束するだけではなびかないため、獲得が難しくなっているのも事実です。

その意味で候補者の選定に慎重になっている企業側にもまた、従来の雇用形態や就業規則に捉われない、新たな選択と変化対応力が求められているというわけです。
                                  担当コンサルタント 高田純

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