スマホ決済をはじめとするアプリの存在感は日増しに高まり、既に生活の一部として定着しつつあります。こうした金融IT化の動きに呼応するように、金融業界では業界再編が進み、店舗の統廃合が加速していることは周知の通りです。地域金融機関にとっても既存ビジネスの枠組みを超えた新たなサービスの創出や新事業の展開はまさしく喫緊の課題であり、それに伴い地方銀行の中途採用、特にIT人材の採用が活発化しています。

　ある有力地銀では、去年まで堅調であったストラクチャー担当をはじめとするフロント人材の採用を休止し、今年度はDX人材を中心とした専門人材の採用のみを行うという方針に換え、デジタル化を推し進める計画を打ち出しました。この背景には地銀が地域におけるお客様の生活の起点となり、生活のさまざまなシーンで使われるアプリ開発を目指し、デジタル人材の採用を強化するという目標があります。
　
　一例として、最近よく耳にするようになった「地域商社」の設立が挙げられます。「地域商社」とは、地域に埋もれて他県にあまり知られていない産品を地域銀行が自ら発掘し、生産者らに代わって域内・域外に拡販する事業です。事業化にあたっては、WEBでの販売促進はもちろん、クラウドファンディングの実施など、デジタル化は不可欠といえます。他にも「中小企業の経営支援をオンラインで可能にするサービスの開発」、「高齢者の多い地域のキャッシュレス環境整備」、「次世代型店舗の開発・運営、法人向けデジタルサービス推進」など、様々な新規事業開発へのチャレンジが始まっています。課題やニーズに応じて求められるスキルは異なりますが、多くの場合、IT技術を活用して、ゼロから１を創造できる能動的な人材が求められています。

　当社に寄せられている具体的な求人としては、銀行におけるデジタル施策の企画立案、システム化検討、データ利活用施策の企画立案、データ活用に向けた銀行内外のデータ分析などがあります。金融機関のみならず事業会社でこれらの経験をお持ちの異業界の方へも広く門戸が開かれていることが特徴です。特にデジタル化・web化によって、よりユーザビリティの高い顧客体験を企画推進できる人材や、更にはIT、アプリ開発においてプロジェクトの全体管理ができるマネジメント人材が求められる傾向にあります。

　弊社へ転職相談におみえになる方の中には、地域金融機関への転身に逡巡される方も少なくありません。異業界の方ほどそうかもしれません。しかし私は、現在進化の真っただ中にある銀行業界、特に地域金融機関のデジタル移行はまだ黎明期であり、既にデジタル化が進んでいる企業にはない「変革の過程」を経験できるという魅力があると感じています。　親の介護など諸事情から地元にUIターンを希望せざるをえない方にとっても、地方・地元に密着した仕事に携われるという安定感だけでなく、より迅速に顧客サービスに対応できる柔軟性や応用力を発揮しつつ新たなインフラを創造する、やりがいのあるポストといえるでしょう。ご興味を持たれた方は、ぜひ一度ご相談ください。

　専任コンサルタント　澤田勢多