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オルタナティブ運用で広がる「企画人材」のキャリア機会
金利上昇を背景とした金融人材の採用ニーズの変化については、以前のVOICE「金利上昇で変わる金融人材の評価軸」でもお伝えしました。今回はその中でも、オルタナティブ運用をめぐる採用市場の変化について考察してまいります。
近年、プライベートエクイティ、プライベートデット、不動産・インフラなどにまで、オルタナティブ投資の対象は幅広い領域に広がっています。
国内最大級のアセットオーナーであるGPIFを例に挙げると、2013年度からオルタナティブ資産への投資を開始し、2017年度にはGPIF向け仕様のマルチ・マネジャー戦略を活用した運用を本格化しています。さらに2022年度からは、自家運用によりLPS(投資事業有限責任組合等)へ直接出資する運用手法も開始しました。GPIFがLPSへ直接出資することで、投資スキームをシンプルにするとともに、投資先に関する情報をより速やかに把握する効果が期待されています。
伝統的な投資対象である上場株式や債券とは異なるリスク・リターン特性や流動性を持ち、ポートフォリオの分散や収益源の多様化に活用されるオルタナティブ資産。こうした投資対象や運用手法の広がりに呼応するように、キャリア採用においても求められる人材の幅が広がりつつあります。
これまでオルタナティブ領域のキャリア採用では、運用担当者やゲートキーパー、ファンド選定・デューデリジェンスなどを担う専門人材の募集が中心でした。こうした人材へのニーズは現在も存在しますが、最近では、それらに加えて「オルタナティブ運用事業そのものを企画・推進する人材」の募集も、大手金融機関や運用会社で見られるようになっています。
その背景の一つとして考えられるのが、金融機関や運用会社が、従来の外部運用会社の選定やゲートキーパー機能を活用しながら、自社・グループ内におけるオルタナティブ運用の機能も強化しようとしていることです。実際に、海外の有力マネジャーとの連携を通じてオルタナティブ商品を提供する一方で、国内プライベートエクイティに投資するファンド・オブ・ファンズや私募REIT、プライベートデットなど、インハウスでの商品・運用機能を強化する金融機関も見られます。
もっとも、これは「ゲートキーパーから自家運用へ」と一方向に移行することを意味するものではありません。外部の専門運用会社を活用する機能を維持しながら、自社・グループ内にも運用ノウハウを蓄積し、両者を組み合わせながらオルタナティブ運用ビジネスを高度化・拡大していく動きと捉える方が実態に近いでしょう。
こうした運用機能の拡大に伴い、注目されているのが「企画人材」です。
オルタナティブ運用を一つの事業として拡大していくためには、優秀な運用担当者を採用するだけでは十分ではありません。どの領域へ参入するのか、AUMをどのように拡大するのか、運用・商品・営業・リスク管理をどのようにつなぐのか、国内外の拠点をどう活用するのか、さらには事業計画やKPI、組織体制をどう設計するのかといった、事業全体を俯瞰した企画・推進機能が必要になります。
実際に、大手運用会社やメガバンク、大手信託銀行などでは、オルタナティブ領域において、事業戦略、AUM拡大、事業計画、計数・KPI管理、新規施策、商品・営業部門との連携、海外拠点との連携などを担う企画・事業推進ポジションの募集が見られます。
そして、キャリアという観点で特に注目したいのは、一部の企画ポジションでは、オルタナティブ運用そのものの経験を必須としていない点です。金融機関や資産運用会社、事業会社などで培った事業企画、新規事業、業務企画、プロジェクト推進といった経験を評価し、オルタナティブ領域の知識については入社後のキャッチアップを想定している求人もあります。
こうしたポジションで求められるのは、必ずしも特定のアセットクラスにおける投資判断の経験だけではありません。商品企画、案件ソーシング、投資判断、運用管理、投資家向け販売といった一連のプロセスを横断的に捉え、それぞれの機能を有機的につなぐ視点や、複数の部署・関係者を巻き込みながら事業を前に進める企画力・推進力が重視されます。そのため、これまでオルタナティブ運用に直接携わってこなかった方であっても、ご自身が培ってきた企画・事業推進の経験を活かし、同領域へキャリアを広げられる可能性があります。
オルタナティブ資産への配分比率は、年金、保険会社、金融法人など投資家の属性によって大きく異なります。一方、分散投資や収益源の多様化、非上場市場へのアクセスなどを目的として、オルタナティブ資産をポートフォリオへ組み入れる動きは定着しつつあります。また、金融機関・運用会社においても、オルタナティブ運用を今後の成長領域の一つと位置づけ、運用体制や事業基盤を強化する動きが見られます。
オルタナティブ領域は、アセットクラスごとに専門性が細分化されており、実務経験を持つ人材の候補者層も決して厚いとはいえません。今後、運用ビジネスの裾野がさらに広がれば、運用経験者だけでなく、オルタナティブ領域を理解しながら事業全体を企画・推進できる人材へのニーズも広がっていく可能性があります。現在お持ちの企画・事業推進経験を軸に、オルタナティブ運用の知見とアセットマネジメントビジネス全体を俯瞰する視点を加えていくことは、中長期的なキャリアの選択肢を広げる一つの機会になり得るのではないでしょうか。ご興味をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
コンサルタント 畑山良太

