信託銀行の「上場会社向けコンサルティング業務」に関連する二つのトピックス

株主総会

　6月は株主総会ラッシュを受け新聞等の報道でも関連記事を目にする機会が多かったのではないでしょうか。特に、アクティビストに関連した記事が目立ちました。日本経済新聞の記事のタイトルをざっと拾ってみても以下の通りです。

（2021年5月14日朝刊）物言う株主の米バリューアクト、セブン&アイ株1700億円保有　コンビニ注力要求
（2021年6月21日朝刊）気がつけばアクティビスト天国　東芝揺らす「正論」株主、官製指針が後ろ盾
（2021年6月11日朝刊）オアシスCIO、脱炭素関連の株主提案「ESGの効果注視」

　2021年4月8日の日経新聞の記事では「株主調査を手掛けるアイ・アールジャパンによると、日本の2020年総会でアクティビストから株主提案を受けた企業は24社と過去最多だった」とございました。今後も増えていくのでしょうか。
　こうした有事だけでなく、平時から株主（アクティビスト含む）との建設的な対話をすることを目的に、多くの上場会社がIR活動に加えSR活動を強化しています。その上場企業のSR/IR活動を支援する信託銀行が「SR/IRコンサルタント」の採用を強化しております。

コーポレートガバナンス・コード改訂

　2021年6月11日、金融庁と東京証券取引所により「改訂コーポレートガバナンス・コード（以下、CG）」が公表され、同日から施行となりました。本改訂は、2022年4月から適用される東証の３つの新しい市場区分（プライム、スタンダード、グロース）と関連しており、上場会社各社はコード改定後の中身を踏まえ、新しい市場区分に合わせたCG報告書を2021年12月末までに提出することになります。上場会社にとって対応準備期間が非常に短く、特に今年8月〜11月に業務が集中することが予想されます。ここでもその活動を支援する「信託銀行のCGコンサルタント」が活躍することになり、中途募集を強化しております。

信託銀行の「上場会社向けコンサルティング業務」の採用強化について

募集対象となっておりますのは、主に①競合他社でご活躍の方（「SR／IRコンサルティング経験者」または「CGコンサルティング経験者」）、②上場会社の「SR／IR経験者」「CG関連業務経験者」となります。

①競合他社でご活躍の方：
　弊社が信託銀行の「CGコンサルタント」にご支援した「他ファームのCGコンサルタント」の方に、ご入社後お聞きした感想・メリットをお伝えしたいと思います。
まず、「案件の多さ」にとても驚いていらっしゃいました。各大手信託銀行は株主名簿管理人として上場企業の３〜４割と常にお取引があり、上場会社側で例えば上述のコード改定の対応のお悩みがある時などにすぐに相談される存在となっております。信託銀行は、クライアントの規模やCG対応の進み具合、コンサルティング案件の金額の大小に関係なく、お客様のあらゆるCG関連の相談に乗るため、多くのコンサルティング案件があるという状況で、それは「日本のCG定着を支える存在」と言っても過言ではなく、その点に魅力に感じていらっしゃいました。

②上場会社の「SR／IR経験者」「CG対応経験者」：
　こちらは①よりも多数転職されております。特に時価総額が一定規模以上（イメージ1000億円）の上場会社の方は、主要な投資家と面談しているケースが多かったり、CG対応が進んでいることから、採用ターゲットとして好まれるようです。ここでは弊社が信託銀行の「SR/IRコンサルタント」にご支援した「上場会社のSR/IR担当」の方が仰っていたことをご紹介したいと思います。
「今まで自社1社のSR・IRのことしか知らなかったが、コンサルティングを通じて複数社のSR/IRの取組みが分かるので、事業会社側よりもSR/IRのプロになれる可能性があり、キャリアの幅が広がる」
「信託銀行は他ファームと異なり、立場的に投資家目線を持っている」
「アクティビスト対応支援といったSRを中心としたコンサルティングに従事する機会をもらい、今後、上場会社のガバナンス向上に寄与したい」
②の方は、「コンサルタントへのキャリアチェンジによるキャリアの発展性」をメリットとして感じていらっしゃるようです。また、もしかしましたら、一般事業会社よりも金融機関の方が年収が高いことが多く、それもメリットとして感じていただいているのかもしれません。

まとめ

　スチュワードシップ・コードの導入、コーポレートガバナンス・コードの浸透、持ち合い株制度の解消等により、上場会社にとって、株主・投資家との建設的な対話が益々重要になってきております。それを支える信託銀行側も採用による体制強化だけでなく、例えば、三井住友信託銀行によるジェイ・ユーラス・アイアール（世界レベルのIR活動を支援する会社）の100％子会社化のように、買収による体制強化の動きもございます。今後、益々、信託銀行による上場会社向けコンサルティングビジネスが盛り上がってくるかと思います。

　次のキャリアを模索されている、SR/IRコンサルティング経験者、CG関連コンサルティング経験者、上場会社の経営企画部/人事部/総務部/秘書室などのCG関連ご経験者（株主総会事務局/取締役会事務局/監査役会・監査（等）委員会事務局）、SR／IR経験者は、一度、ご相談いただければと思います。

　専任コンサルタント　土井徹