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金融業界における、人的資本への取り組み

 近年、人的資本を経営課題として取り組む企業の動きが加速しています。2022年9月にパーソルホールディングスが行った人的資本経営に関する実態調査では、回答企業1000社の7割超が人的資本経営に取り組んでいるという結果が得られました。人的資本とは、人をモノ・カネと同様に、知識やスキルなどの付加価値を創造する資本とみなした概念です。
 従来から人=コストの考え方が根強くありましたが、昨今の産業構造の変化に加え、コロナ禍をきっかけとする人々のライフスタイルの変化により、この概念が注目され始めました。経済産業省が2020年1月に開催した「第1回持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」の説明資料によると、株主総会で人事・労務に関連した内容が議論された企業は直近10年で2倍になったという報告があります。これは、投資家の人材関係への関心の高さが伺えます。その後、同年9月に発行された人材版伊藤レポート2.0では、「持続的な企業価値の向上を実現するためには、ビジネスモデル、経営戦略と人材戦略が連動していることが不可欠である」と述べています。

 金融業界における人的資本への取り組みについて具体的な事例を見て参りましょう。
 三井住友銀行では、学習意欲を持った従業員に対して、大学院通学や各種資格取得に要した講座費用の一部を補助する「キャリアデザイン学習支援制度」を導入しており、2021年度は希望者1人当たり約58万円を支給しています。業務の多様化、複雑化、高度化が進む中、人財力の総和を最大化するため、組織に風穴をもたらすプロフェッショナル人材の育成・確保を進めています。
 リコーリースは2020〜2022年度の中期経営計画の中で、社員の幸福を会社全体の業績拡大につなげる人財マネジメントを人事戦略に掲げ、「Happiness αt work(ハピネスアットワーク)」をコンセプトに人事施策に取り組んでいます。従業員一人ひとりの幸せを定義・可視化するためエンゲージメント調査を行い、その結果はリアルタイムで集計・数値化され、すべての組織で共有化される仕組みになっています。これは優れた人的資本経営及び情報開示の取組みを行っていると認められる人的資本リーダーズ2022に選出され、専門家から高い評価を受けています。
 某生命保険会社は、戦略人材確保のため、2021年に人事部の組織体制を変更しました。すべての部署の窓口 を人事部長と副部長に置いていた従来の体制から、各部署担当のビジネスパートナー(HRBP) を置く新たな手法を採用し、部署の戦略を理解した担当者(HRBP)が現場と連携し、より迅速に人事施策を実行していけるようにして、各部署のタレントレビューや戦略的人材ポートフォリオの形成に向けて、活動しています。 それには経営陣と現場部門長の間に入って、ディスカッションのできる役割が求められます。
 上場地銀76行・グループのうち、人的資本への取り組みや、情報開示を積極的に行った48行 は、株価が上昇したと2022年10月28日(日本経済新聞)の記事で報じられました。今後も、経営戦略の一環として重要視されることは、十分に考えられると思います。

 実際に企業の採用担当者から、人事部門での募集の際に、「人的資本の観点から弊社の経営課題解決に絡めた人事戦略を策定し、実行できる人を探している」とのお声をいただきます。 現在の変わりゆく社会情勢の中で、企業が進むべき方向性を理解し、推し進められるような経営者的な目線を持つ人材、個人と組織をつなぐパイプ役として、マネジメントできる人材が求められていると考えられます。企業価値を引き上げる重要な役割を担いたい、従来の金融業界の経営のあり方を変えていきたいとお考えの方は、是非一度ご相談下さい。
                         
 コンサルタント 細沼弘樹

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